日本薬剤師会専務理事 石井 甲一
2008年は、診療報酬・調剤報酬改定への対応から始まった。07年末に今年度政府予算案が決定され、8年ぶりの引き上げ改定が実現したことを受けて、具体的な評価項目と点数設定をどのようにするのかという議論が、中央社会保険医療協議会を中心に進められた。
調剤報酬においては、0・17%という小さな引き上げ改定ではあったが、後発医薬品の使用促進、在宅医療への参加、後期高齢者薬剤服用歴管理指導などを評価する点数設定がなされ、診療報酬においては、癌医療の推進に対する薬剤師の貢献を評価する一方、薬剤管理指導に対しては、患者の状況に応じたメリハリのある評価がなされた。同時に行われた薬価の引き下げにより、全体の改定率はマイナスとなり、厳しい改定となったが、中身のある改定であったと考えている。
後発医薬品の使用促進という観点から、処方せんの様式が再変更され、薬局・薬剤師への期待がさらに大きなものとなった。本会では中医協に先んじて、後発医薬品の使用状況を調査することとし、9月を調査対象月として実施した。その結果は中間報告として、11月に中医協へ報告させていただいた。
「後発医薬品への変更が可能な処方せん枚数の増加の割には、実際に後発医薬品に変更して調剤した処方せんの割合の伸びが少ない」との指摘を受けたことは残念であったが、後発医薬品に変更して調剤したことがある「薬局」の割合について見ると、約78%という高率であったことは、評価していただきたいと思っている。
来年は、10年度の改定に向けての議論が開始される。医療財政の厳しい中ではあるが、薬剤師が安心して医療の質の向上に貢献できるような改定を目指したいと考えている。
一般用医薬品の販売制度については、06年6月の薬事法改正を受け、改正法律の公布後3年以内の施行を目指して、「医薬品の販売等に係る体制及び環境整備に関する検討会」において議論が開始され、今年7月に報告書がまとめられた。新たな専門家として登録販売者が登場する中で、本会としては、薬剤師のみが扱うことが許される第1類医薬品を販売する店舗販売業の管理者を、「薬剤師」に限定するよう主張してきたが、「薬剤師を原則とする」との結論になったことは残念な結果であった。
また、全ての一般用医薬品について、インターネットを用いた販売を認めるべきとの要求が、検討会報告書の公表後、規制改革会議から突然提起された。4年以上にわたって公開の場で議論されて得られた結論を、振り出しに戻そうとする要求であり、強い憤りを覚えると同時に、薬業関連団体とも協調して、反対活動を展開した。
来年6月からスタートする新たな販売制度においては、医薬品の販売に対する薬剤師の深い関与と貢献を改めて求めており、対面販売を通じてその期待に応えていかなければならない。
06年にスタートした薬学教育6年制も、3年目に入った。10年度からは長期実務実習も始まる。薬学実習生を指導する薬剤師の養成は順調に進んでおり、数の上では問題ないと考えているが、薬科大学の分布の地域偏在を考えると、安心しているわけにはいかない。実習生と実習先のマッチング作業が、実務実習調整機構を中心として開始されており、来年の6月までに、各大学は文部科学省に実習先のリストを提出しなければならない。長期実務実習は、薬学教育が続く限り毎年実施されるものであり、本会としては長期にわたる計画的な指導薬剤師の養成に、今後とも着実に取り組んでいかなければならないと考えている。
医薬分業は、07年度には57・2%となり、60%に近づきつつある。薬局における調剤サービスの質の向上努力を継続して行い、国民の皆さんから、一層信頼される制度にしていく必要があると考えている。
厚生労働省において6月にまとめられた「安心と希望の医療確保ビジョン」には、これからの薬局に求められる機能として、在宅医療への参加が明記されている。薬局は、地域医療におけるチーム医療の中で、医薬品や衛生材料の供給拠点として、薬局薬剤師は医薬品などの適正使用のための患者指導を通じて、在宅患者へのサービスを展開することが、これからますます求められてくると考える。
本会では、医療法や薬事法が改正されたことを受けて、06年9月に「新・薬剤師行動計画」を策定し、今年7月に初めての実施状況の検証結果を発表した。この行動計画は、[1]新たな医療制度への対応[2]新たな一般用医薬品販売制度への対応[3]医薬品の適正使用への貢献――という3点からなっており、いわば薬局が持っている多くの機能を整理したものと言える。全ての薬局が、行動計画に明記されている機能の全てを発揮し、地域医療の中に定着していくよう支援することが、本会の大きな課題であると考えている。