日本OTC医薬品協会常務理事 西沢 元仁
新年祝賀会での会長演説にも示されたように、今年は2006年からのOTC医薬品市場回復を本格化させることにより、生活者を主体とするセルフメディケーションの復権に向けた活動が一段と活発化した。この動きは、医薬品販売制度改正を中心とした薬事法改正が、09年に最終施行となることにより、さらなる発展を遂げることが期待される。
昨年3月に、厚生労働省はスイッチOTC薬促進に向け、医療用医薬品成分を一般用医薬品に転用する際のスキームを示したが、これに呼応すべく日本OTC医薬品協会では、翌4月に候補成分として70品目を公表した。今年4月には、日本薬学会から20成分(12品目)の候補リストが厚生労働省に提出され、これに対する日本医学会からの意見も7月に提出された。
8月の薬事・食品衛生審議会一般用医薬品部会では、両学会の共通した推薦として七つの品目を了承し、四つの品目について引き続き検討とした。厚生労働省から、この7品目について業界にOTCスイッチへの努力を促す通知が出されたことは、当然の流れとはいえエポックメイキングな出来事であった。
4月には、OTC医薬品の名称を普及する新たなロゴの制定を行うと共に、当協会の名称も旧来の「日本大衆薬工業協会」から「日本OTC医薬品協会」に一新した。また、5月には改正薬事法の施行に向けた検討を継続する中で、先行して昨年示されたOTC医薬品の3区分にかかる表示等についての省令が公布され、全面施行に向けた準備を行うことが督励されるに至り、会員各社もこの対応を進めた。
6月にストックホルムで行われた世界セルフメディケーション協会(WSMI)理事会には、WSMIアジア太平洋地区担当副会長を務める佐藤誠一副会長、アジア太平洋地域協会(APSMI:仮称)タスクフォースリーダーを務める羽鳥成一郎副会長と共に鶴田康則理事長が出席。発展著しいアジア太平洋地域のOTC市場の適正な進捗に向け、APSMI設立に向けた検討が進められたことを報告し、11月に北京で開催される世界セルフメディケーション協会総会に向けて、引き続き努力することが了承された。
8月には、昨年全面改定された「新医薬品産業ビジョン」のフォローアップ会合が開かれ、当協会からもスイッチの進展をはじめとした振興策の着実な実現を、協力して進めるべきことを指摘した。10月には、スイッチ化スキームの引き続きの実践を促すべく、当協会は追加候補20品目を公表した。
11月に北京で開催されたWSMI総会及び第7回アジア太平洋地域会合には、日本から三輪芳弘会長、佐藤副会長、羽鳥副会長、風間八左衛門副会長、鶴田理事長をはじめとして、OTC医薬品業界から参加した関係者は50人を超えた。
この総会において三輪会長は、日本でのセルフメディケーションに向けた取り組みを紹介すると共に、将来のアジア太平洋地域における活動とその拠点について検討し、地域組織の可能性と課題点について整理するタスクフォースの活動を支援してきたこと、発足に際しては他の域内諸協会と共に積極的に支援する考えを表明した。前後して開催されたWSMI理事会でも、APSMIの10年設立を目指して、さらなる活動を進めることが了承された。
この総会に前後して、改正薬事法の最終施行に向けたパブリックコメントが出され、来年6月に施行すること等が示された。これに対し関係者からは、適切な対応を図る上で様々な意見が提出されたが、最終施行を適切に行うべく、細目の通知を含めた早期の公布を望む強い声が出されている。
いわゆるネットによる医薬品販売に関した論議により、公布が遅れているとされるが、生活者の利便と安全の確保を図ろうとする今次の改正法施行を速やかに実現した上で、これまでの論議で尽くされていない課題について取り組むべきではなかろうか。
このような1年の中で、昨年に引き続きスイッチOTC医薬品として新たな効能を標榜するものが登場し、生活者のニーズに応えようとしている。また、漢方薬製剤の復調も着実となっている。これらの動きは、世界的な経済危機が懸念されるにもかかわらず、健康への生活者の関心の高まりを受けて、堅調な市場回復を支えるものとなっている。
来たる年には、生活者にとって頼りになるOTC医薬品の供給が確保され、自分の健康に留意し、積極的な対応を図ろうとする生活者のセルフメディケーションが一段と促進され、その笑顔を頂戴できるものとなるよう願っている。