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【第54回日薬学術大会】研鑽の場確保へウェブ開催に‐大会運営委員長 原口 亨氏(福岡県薬剤師会会長)に聞く

2021年09月13日 (月)

第54回日本薬剤師会学術大会

原口亨氏

 第54回日本薬剤師会学術大会が「多様性を可能性に~未来に広がる薬剤師」をテーマに19、20日に完全ウェブで開催される。当初は現地開催とウェブ開催のハイブリッド形式で実施する予定だったが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で急遽、開催方法を変更した。大会運営委員長の原口亨氏(福岡県薬剤師会会長)は、「コロナの感染が続き、緊急事態宣言が発令されている状況だと現地開催は難しい。薬剤師の自己研鑽も必要である中で完全ウェブ開催は苦渋の決断だった」と打ち明ける。原口氏に完全ウェブ開催に決めた背景や、今回のテーマにかけた思いを聞いた。

 ――完全ウェブ開催を決めた背景は。

 長い期間をかけて準備を進めてきただけに、開催方式が完全ウェブ開催となったことはとても残念だ。

 8月に入って県知事が国に対して緊急事態宣言を要請し、宣言の対象地域となった。福岡はこれまで4回の緊急事態宣言を発令しており、1回目は6週間、2、3回目は5週間が対象期間となっている。8月12日に完全ウェブ開催を決めたのは、日薬学術大会の開催時期と宣言の期間が重なってしまうからだ。日薬大会を通常通り開催しようとしても、会場を使うことができない措置が取られ、最悪ウェブで開催することもできなくなってしまう。

 完全ウェブで開催するにしても、民間の施設で配信に特化した準備をせざるを得ないことを考えると、このタイミングでなければ完全ウェブ開催への変更ができなかった。昨年の北海道での開催は感染者数が減ってきて、ちょうど感染再拡大する前に当たる“谷のタイミング”で、現地開催とウェブ開催のハイブリッド方式で実施することができた。ただ、8月12日には福岡県の1日の感染者数が1000人を越えた。

 十分な感染防止対策を取った形で開催するとしても、人流が発生したことに伴う感染リスクの可能性も考えないといけないし、他県から集まった薬剤師が福岡に来て感染してしまうこともあり得る。全ての医療職種が医療提供体制の確保に取り組む中、薬剤師の思いだけでは物事の選択はできない。

 とはいえ、コロナ禍だから全てをコロナのせいにして中止すればいいという問題でもないし、そうなると自己研鑽もできなくなる。どういった開催方法が良いかを考えた結果、完全ウェブ開催という選択に至った。

 緊急事態宣言下では会場が使えなくなるためオペレーションから資材、機材の選択まで全てを変えないといけない。出展される企業の方々には、企業展示がなくなることによるお詫びもしないといけないし、返金もしないといけない。学術大会で福岡の素晴らしいところを宣伝し、皆さんから「福岡っていいところですね」と言ってもらえることを楽しみにしていた。福岡に来てもらえなくなることが大変残念だ。

薬剤師は多様性に富む職種‐革新生み出す可能性持つ

 ――“多様性を可能性に”というテーマに込めた思いは。

 医療職種の中でも、薬剤師が最も幅広い領域で働いている職種だと思う。医療職種は、何かに特化した資格を持っているから専門職と呼ばれると思うが、薬剤師の専門職が生かされて働く場は他の医療職種に比べて突出して多い。

 研究開発で活躍している薬剤師も多いし、女性の割合が多いことも一つの特徴で、化粧品メーカーなどで働く薬剤師もいる。統合医療にも関わり、健康食品や特定機能食品の開発・販売にも関わる。薬剤師は医療職種でありつつも、医療の場でもないところで活躍しているケースも多く、多様性を持って活躍できている状況については肯定的に考えていいことだと思っている。

 ただ、それぞれの専門性を持った人たちだけが集まって一つのことを突き詰めていくことは、専門的な活動としてはとても重要なことだと思う一方、限定した活動にせずに様々な人たちが持つ多様性から生まれてくるイノベーションもあると考えている。同じ方向を向いている人、同じことに取り組んでいる集団だけでは絶対持つことができなかった視点からの意見が必要で、自分たちとは違うフィールドで活躍している薬剤師の意見を融合したときに、持続的なイノベーションが生まれてくると思う。

 多様性からイノベーションを生み出せる環境を薬剤師は持っている。特に日本薬剤師会は薬剤師免許を持っていることだけで所属できる組織だ。それぞれの思いや価値観を持った人が集まって、専門性を突き詰めて活動していくことも当然できるし、薬剤師免許を持っているという共通項で構築された団体の学術大会であれば、これまで触れることのなかった領域で新たな機会を得ることができる。こうした思いから、“多様性を可能性に”というテーマにした。

 もう一つの側面として、薬剤師に対する潜在的なニーズを自ら発掘していくことも求められている。例えば、ワクチンの打ち手候補に薬剤師を加えるべきかの議論はこれまで予想できなかったことであり、われわれも地域住民もまだ認識できていない薬剤師へのニーズも存在している。

 地域に密着した医療専門職である薬剤師だからこそ、潜在的なニーズに対応できると思っている。地域によって薬剤師に求められるものは異なるが、その地域、その人口構成だからできたではなく、日本全域で薬局や薬剤師があらゆる潜在的なニーズに対応できるような環境にしていくことが望ましい。

 薬剤師の多様性に基づいてイノベーションを生み出していくことと、社会に存在する多様で潜在的なニーズに対応していくという両面に対応できるようにしたい。

新たな領域に触れる機会

 ――演題について。

 過去の日薬大会ではおそらく採択されないような演題やシンポジウムを立てた。コロナ関連や災害医療関連、ICT関係が入ってくるが、それ以外に各薬局の活動や人工知能(AI)に関する演題も用意した。また医療経済的な視点で薬剤師が求められていることなどもテーマに扱った。22の分科会、17のランチョンセミナーを予定している。

 専門薬剤師制度が走り始めているので、専門領域に特化した知識を学べる環境ができた。日薬学術大会では専門特化というよりは領域横断という位置づけで、様々な領域のエッセンスを知ることができる場にして、きっかけ作りにしてほしい。

 将来、地域で活躍する薬剤師をイメージすると、様々な領域で活動していく中で研究、臨床、、病院で働いている人たちの知識や経験を共有できるプラットフォームが必要になる。薬剤師が様々な領域に関与しているのは事実なので、新たな領域に触れて行動を起こす薬剤師が1人でも増えたらいい。

 ――どんな学術大会にしたいか。

 8月中旬時点の事前参加登録者は約9500人となっている。ウェブでの参加がしやすいよう、事前登録者の参加費は7000円とリーズナブルな価格にした。同じ時間帯で興味のある演題が複数あったとしても、会場の移動が簡単にできるので、視聴しやすいと思う。

 日本薬剤師研修センター研修薬剤師認定制度の研修受講シールの配布についても見直した。単位申請を希望する場合は対象となる分科会を視聴し、キーワード提出を行う必要があったが、今回は薬剤師研修センターに持ちかけてキーワードを報告するのではなく、福岡県薬が視聴ログを管理し、研修受講シールの配布を行うことになった。視聴ログで管理してシールを発行する方法は、薬剤師研修センターが稼働を予定している薬剤師研修・認定システム(PECS)の概念と同じであり、先取りした形であることから特例で認めてもらった。

 普段であれば参加しないような分科会に参加してもらい、そこで新たな気づきが生まれることを期待している。




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