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【第54回日薬学術大会】コロナで問われる薬局の使命‐日本薬剤師会 山本 信夫会長に聞く

2021年09月13日 (月)

第54回日本薬剤師会学術大会

医薬品提供、役割果たして

山本信夫氏

 新型コロナウイルス感染症の再拡大で地域の医療提供体制確保が大きな課題となっている。薬の長期処方を希望する患者が増えるなど受療行動が変わる中、地域での医薬品提供を支える薬局や薬剤師は今後どう対応していくのか。改正医薬品医療機器等法の関連省令第2弾の施行で、地域連携薬局や専門医療機関連携薬局など薬局認定制度がスタートする中、日本薬剤師会の山本信夫会長にコロナと共存するウィズコロナ時代、収束後のポストコロナ時代における薬局・薬剤師像などを聞いた。

受診間隔の長期化に対応‐OTC含め服薬状況把握を

 ――コロナ禍の中で薬局や薬剤師のあり方をどう捉えているか。

 薬局・薬剤師は、地域の中で患者・住民一人ひとりに対する医薬品提供をどう支えていくか、地域での医薬品提供体制をこれまで以上に考える必要がある。

 当初は大方の方々がこれほどコロナの感染拡大が長く続くとは思わなかったと思う。多分昨年初めに感染第1波が始まった時期には冬になれば少し収まるのではないかという楽観的な見方もあった。しかし、スペイン風邪やペストの感染等も一定の収束を見るまでに3~4年かかっているように、これまでの歴史を振り返ってみると、収束までにまだ時間はかかるのかなと思っている。

 新型コロナウイルス感染症患者を受け入れてきた医療機関にとっては大変な状況であり、薬剤師も様々に工夫をしながら、コロナ感染症が私たちの身体にどういう反応を起こすかなどその性格がはっきり分かっていない時期も、感染防御をしながら医薬品の供給体制が滞らないよう対応してきた。しかし、医療者の一員として新型コロナウイルス感染症拡大の中にあって医療提供体制を確保するために頑張ってきたが、社会から何もやっていないのではないかという批判もあり、適正な評価が得られていないことは残念だ。

 感染が収束した後のポストコロナがいつ来るか、まだ明確には分からないが、この1年間で患者さんの医療機関へのかかり方がだいぶ変わってきたのではないかと思っている。受診間隔が長期になってきていることも、大きな特徴と言えるだろう。

 また、患者さんが長期投薬を受けることが一般的と感じるならば、処方箋を記載通りに一度に調剤し投薬するか、あるいは分割調剤を選択するか、患者さんのこれまでの投薬状況等への配慮が不可欠となる。となると、改正医薬品医療機器等法が求める継続的な服薬フォローが義務化となったように、受診間隔が長くなってもその間、薬剤師が患者さんをフォローしながら、継続した薬物治療を支えていくことが大きな課題になる。

 ポストコロナ時代では、薬剤師が処方箋枚数を競うのではなく、どれほどの患者さんをしっかり自分の薬局でケアできているのかが問われてくる。その課題解決には、これまでは別々の視点で考えられがちであった調剤薬の提供とOTC医薬品の供給を合わせて考える必要があり、患者さん一人ひとりの状況をしっかり把握した上で、薬剤師がOTC医薬品を含めて「その人」が使う医薬品を一元的、継続的に管理し、薬の服用状況や健康状況さらには生活状況までも観察していかなくてはならない。言わば「A Patient」から「The Patient」への視点転換と言っても良いだろう。

 また、こうした視点で、地域の中でどう医薬品提供体制を組み上げていくかを考えていく必要がある。患者さんの来局日数は減る中で、薬の処方量は変わらないという状況も踏まえて、日薬では5月に公表した政策提言の中で地域医薬品提供計画(仮称)を示しているが、地域医薬品提供計画と地域医療計画が一体化して機能する時代、すなわちわが国で医薬分業制度が社会制度として機能する時代が訪れるものと思う。

 一方、新型コロナ感染症拡大と同じ時期に後発品の供給不安が発生し、薬剤師はサプライチェーンの重要性も改めて実感したと思う。ウィズコロナの時代に後発品が足らないということを経験し、今もなお不足していることに、将来的に地域への医薬品提供体制をどう考えるか別の意味で大きな課題になった。

実態伴う薬局認定制度に‐地域での機能考えるべき

 ――認定薬局制度が8月に施行された。

 地域包括ケアの中で薬局や医療機関に加えて地域との連携を踏まえた「地域連携薬局」と、癌などの専門的な薬学的管理に対応できる「専門医療機関連携薬局」を都道府県知事が認定する制度として新たに設けられた。この制度改正を受けて多くの薬剤師の目が二つの認定薬局に向いているように感じる。

 まず薬剤師として考えるべきことは、「薬局が医薬品供給で重要な拠点としての機能にある」ことを忘れてはならない。「地域連携」と「専門医療機関連携」で求められる機能は、「薬局」としての機能を果たした先にある姿だと認識すべきだろう。

 2019年の薬機法改正は、これまで幾度かの法改正を経て薬局の定義や薬剤師の役割を変革させる大きな改正だったと思っている。地域連携薬局は健康サポート薬局と同様に、認定が取れたから何かできるわけではない。地域連携薬局はどの薬局でもなることはできると思うし、地域連携薬局という看板を立てなくても地域連携薬局を標榜している薬局以上に地域に薬剤師・薬局サービスを提供できる。

 薬局として持たなければならない機能は、薬剤師法第1条に書かれてあるように、調剤と医薬品供給、その他薬事衛生を司ることに他ならないが、多くの薬剤師が「OTC医薬品の供給と調剤は別」と誤解してしまった。これでは地域への医薬品供給は大丈夫なのかということになる。

 薬局は1類、2類、3類、要指導医薬品、処方箋医薬品等、すべからく医薬品を提供する場所とされたことからも「要指導医薬品を扱いません」というのは調剤拒否と同じ行為であると思う。また、地域住民から見ればどんな時間でもいつでも薬剤師と相談できる薬局と、決まった時間でないと薬剤師に相談できない薬局とでは、前者のほうが安心感が増すだろう。

 今回薬機法で示された薬剤師の役割をしっかり果たせれば、認定薬局の有無に関わらず、地域の人たちは地域・住民について十分に機能を持った薬局を選んでくれるはず。認定薬局制度を否定するということではない。しかし、認定薬局の数が増えたとしても、実態が伴わなければ、薬局は何をやっているのかと指摘をされる。そうならないように、しっかりとした形で制度を定着させていかないといけない。

デジタル化、安全担保が必要

 ――デジタル化への対応は。

 ウィズコロナ、ポストコロナで考えるべき大事な問題はデジタル化だと思う。デジタル化がどんどん進んでも人が行うプロセスは残るし、人と人の関係はなくなることはないだろう。日薬としてもデジタル化を無視して将来計画は考えられないし、どう対応していくかは重要課題だ。

 ただ、デジタル化は利便性がある反面、危険性も伴う。医療の根幹な部分を壊さずに進めていかないといけない。例えば、オンライン服薬指導では薬剤師であるかの資格確認をどうするか、薬剤師が対応している患者さんが本当に自分の患者さんであるかを確認する手段はデジタル化が進めばますます必要ではないか。

 デジタル化を進めることに反対ではない。しかし、拙速に進めることには一抹の不安を感じる。デジタル化が進めば進むほど、安全性を担保する仕組みが必要だ。われわれが考えないといけないのは、「この患者さんが正しく薬を飲んでもらえているのか、この患者さんで間違いないのか」という判断をどうするかだと思う。

 また、在宅医療における残薬の問題もあり、例えば服薬アドヒアランスが悪い人にどうしたら的確に薬を飲んでもらえるのか等も課題になるだろう。

 進めないためのエビデンスではなく、皆さんが納得できるエビデンスをもって進めてほしい。そして、デジタル化を進めるべき領域と進めるべきでない領域を判断することが大切だ。

 規制を外すことで物事が進むことがあるが、規制を外した場合に誰が責任を取るのかを決めないまま物事が進められることには危うさを感じる。

需給調査、画期的な内容

 ――薬剤師の資質向上および養成検討会の取りまとめに対する評価は。

 薬剤師の需給調査が行われたのは今回で5回目となる。これまでの議論ではこのまま需給が推移すれば「薬剤師が過剰となる」という討論であったが、今回の取りまとめでは「確実に薬剤師が余るので養成定員を減らすべき」と結論付けられた。どれだけ薬剤師に対する需要を広げていっても余るとされ、今後、30万人の薬剤師総数が毎年1万人増えてくる状況が予想され、薬剤師としてどんな仕事をさせていけばいいのかという課題も提起されている。

 取りまとめでは資質向上という意味で薬剤師の仕事の範囲についても示されているが、それでも薬剤師が余るとした画期的な報告書の取りまとめについては評価している。今回の取りまとめは過去に実施された調査結果とは全く異なる新しい考え方で、今後の業務を考えるたたき台として及第点と言えるのではないか。

 文部科学省も大学薬学部新設が相次ぐ中で定員抑制の議論を進めていく必要がある。薬学教育で薬剤師を目指すということは忘れてはならない。薬学教育と薬剤師養成教育はある部分では併存し、ある部分はお互いに協調し合いながら質を高めていく必要がある。

 厚労省は薬剤師になる人をチェックするところであり、薬剤師をつくる文科省にも薬剤師養成と薬学教育を合わせて考えてほしい。

ワクチン打ち手は将来的に

 ――コロナワクチンの打ち手の議論について。

 各都道府県薬剤師会が主催したワクチン接種に関する研修がスタートする。ワクチン接種について打ち手不足が指摘される中、「薬剤師も打ち手として参画せよ」という要請があれば逃げることなく協力していきたいと思っている。ただ、薬剤師の主たる役割は薬をどのように提供できるかということであり、当初から打ち手になることにこだわっているわけではない。

 厚労省検討会の議論でも、ワクチン接種のスピードに最も影響する工程は接種する人の数を確保するよりも、ワクチンを迅速にかつ安全に接種できるようにシリンジへの充填等の業務が重要であることが明らかになり、そのワクチン接種の律速段階については薬剤師が担うべきとされた。看護師や医師が接種に専念してもらうために、薬剤師がバイアルから注射器に充填するワクチン調製を行うのは、ワクチン接種体制の下でタスクシェアをする上で薬剤師の専門性も生かせるし、全体として業務も効率化できる。何より、・看護師が接種に専念できることにもつながる。

 薬剤師が打ち手になるということと、薬剤師として何をしなければならないかという業務の棲み分けはしっかりと考えないといけない。将来的にワクチン接種に必要な知識や技能を身に付けるための教育を行い、ワクチン接種の打ち手に回ることは否定しない。ただ、今すぐにワクチンの打ち手になろうとするのは、落ち着いた議論ではないと考えている。

24年度改定へ基礎作り

 ――秋から22年度改定の調剤報酬議論に向けた第2ラウンドの議論が始まる。

 20年度改定も22年度改定も一つの通過点で最終的なゴールは24年度改定だと考えてきた。従って22年度改定は24年度改定に向けて何をするかという基礎作りといっても良いと思う。24年度改定は診療報酬・介護報酬の同時改定、25年の医療計画の見直しを考えると24年度改定でその先の10年間の方向性を明確にするために、22年度改定ではその時々に向けて様々な手前の状況でいろんな議論をしておかなくてはならないと思っていた。

 ただ、ウィズコロナ時代となり新型コロナウイルス対応で多くの財源を使い、22年度改定は難しい改定にはなるだろう。

 22年度改定とコロナ対応として緊急的な点数財源とは出どころが違う。従って、新型コロナ感染症にかかる特例的な対応として感染予防策を講じている薬局は「処方箋受付1回当たり4点を調剤基本料に加算できる措置」が取られたが、22年度改定については、コロナ対応としての診療報酬上の措置とは切り離し、検討すべきと思っている。

 22年度改定は財源がない中でコロナの状況を見つつ、対物業務から対人業務にシフトしていく議論を進めていくと思う。ただ、対物業務はゼロでいいわけではなく、対物中心から対人中心へと進めていくということ。一気に進めるというのではなく、体系を見直すという慎重な対応が必要だ。

 財源は限りがあるので何が優先されるかまでは分からないが、将来を見据えて22年度改定でも幅広くいろんな議論をしておく必要がある。

ウェブの良さ生かす大会へ

 ――福岡での学術大会は完全ウェブ方式に変更になった。

 完全ウェブ方式での開催に急遽変更せざるを得なくなり、皆さんに直接会えないのは大変残念な思いだ。現地開催とウェブ開催のハイブリッド方式の実施も考えたが、コロナの感染が再拡大する時期に医療者を1万人集めることは主催者側にも抵抗感があり、完全ウェブ方式での開催にせざるを得なかった。

 演題については興味深いテーマが揃っているので皆さんにはぜひウェブから参加してほしい。コロナだからウェブで聴く、コロナではないから現地に行くという参加方法ではなく、簡単にアクセスできるのがウェブの良さだ。

 ポストコロナ時代における学術大会の開催形式は今後、ウェブとリアルの二本柱になっていくのではないかと指摘する声も聞かれる。ウェブ、リアルあるいはハイブリッドと区分けするのではなくそれぞれの特徴を生かした対応が求められる。現地開催で人と会って交流できることはもちろん重要であり、あまり時間がない人でもウェブで聴講して新しい知識を吸収することもウェブの良さがある。来年の開催地である宮城での学術大会がどういう形式で実施できるかは分からないが、現地開催ができることを願っている。

 ――会員に向けたメッセージを。

 薬剤師に対してはコロナ禍という大変な時期だからこそ、「必要な医薬品を地域住民・患者に過不足なく薬を届けていく重要さ」を改めて考え直してほしい。患者さんに限ってだけではなく地域に暮らしている人にとっても医薬品にアクセスできる環境が重要になるが、「コロナパンデミックによって薬へのアクセスが損なわれること」は薬剤師として本意ではないし、残念なこと。

 オンラインなど様々なデバイスを使って患者さんと対応し、安全に薬を提供できる体制を確保していくことが薬剤師の役割になる。ウィズコロナ、アフターコロナの新たな日常の中でも薬を安全に提供していくために何をすべきかを考えるための一つのきっかけとして、学術大会に参加してもらいたい。




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