第54回日本薬剤師会学術大会
第54回日本薬剤師会学術大会(大会運営委員長:原口亨福岡県薬剤師会会長)が19、20の両日、完全ウェブで開催される。新型コロナウイルス感染症の動向に注視しつつ、ウェブと現地でのハイブリッド形式での開催に向けた準備を進めてきたが、急遽現地開催は断念した。特別記念講演、三つの特別講演、22の分科会、17のランチョンセミナーなどが予定されている。
福岡での開催は、第36回以来18年ぶりの開催で、初のハイブリッド方式となった第53回大会から分科会の演題数を多く準備し、盛大に実施する予定だった。
ただ、新型コロナウイルス感染者数は全国で増加し、全国で緊急事態宣言が発令され、感染者数が急激に減少することが想像し難い状況となっている。医療従事者である薬剤師の学術大会が県境を越える形で開催される点、緊急事態措置の適用が会期と重なった場合は、開催会場の使用制限等による中止も想定される点などについて考慮が必要となっていたことから、大会の開催方式を完全ウェブ開催とすることに決めた。原口氏は、「現地での開催が行えずに非常に残念」と悔しさを滲ませた。
完全ウェブ開催となるものの、当初に計画していたプログラムは最大限実施する方向だ。特別記念講演・特別講演・分科会・共催セミナーなどのプログラムはライブ配信で視聴・閲覧できるようにした。一般演題(口頭およびポスター)については全てウェブポスターとしてデータのみ掲載する方針。県民公開講座については中止を決めた。
大会のメインテーマは、いろいろな分野、領域で活躍する薬剤師が一同に集い、ともに学ぶ場とするため、メインテーマを「多様性を可能性に」とし、サブテーマを「未来に広がる薬剤師」とした。
原口氏は、「医療職種の中でも薬剤師が最も多領域で活躍している職種ではないか」との考えを示し、「様々な専門性を持った人たちが集まり、発表することでイノベーションが生まれる」と述べ、学術大会を多様性に基づくイノベーションを生み出す場にしたい考えだ。
また、薬剤師に対する需要についても「顕在化されているニーズだけではなく、薬剤師側にも地域住民側にも十分に認識されていない多様なニーズがある」と潜在的なニーズを発掘する必要性を指摘した。
特別記念講演では、2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典氏(東京工業大学科学技術創成研究院細胞制御工学研究センター特任教授・栄誉教授)が、「オートファジー研究の展開から見えてきたこと」とのテーマで話す。大隅氏は福岡県福岡市出身。細胞内にある不要な物質を分解するオートファジー研究の先駆者として、興味深い話が聞けそうだ。
特別講演は三つの演題を用意している。大戸茂弘氏(九州大学大学院薬学研究院薬剤学・教授/薬学研究院長・薬学府長・薬学部長)が「身体に優しい時間治療」、小泉俊三氏(東光会七条診療所所長/Choosing Wisely Japan代表)、岡田浩氏(京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野特定講師)が「薬局を地域のソーシャル・キャピタルに―京都大学SPH薬局情報グループの活動から」のテーマで講演する。
分科会の演題数は22に増やし、薬剤師養成から臨床研究、医療ICT、医療経済、在宅医療、改正医薬品医療機器等法、医薬品の安定供給、人工知能・デジタルヘルス、新型コロナウイルスに関連した話題など多彩なラインナップを揃えた。“多様性を可能性に”のテーマにふさわしい新たな演題も取り入れられている。
【主催】日本薬剤師会、福岡県薬剤師会
【会期】19日(日)、20日(月・祝)
【大会ホームページ】https://jpa54.com/