米製薬最大手のファイザーは26日(現地時間)、世界9位のワイスを買収すると発表した。買収総額は680億ドル(約6兆円)で、1株あたり50・19ドルの現金で実施する。ワイスが強みを持つバイオ医薬品、ワクチンを取り込むことで、さらなる世界的な成長機会が得られると判断した。2007年の売上高は、トップのファイザーが444億ドル(約3兆9600億円)、9位のワイスが約186億ドル(約1兆6500億円)で、今回の買収によって6兆円近い圧倒的な製薬企業が誕生することになる。
ワイスは、世界的な主力製品の関節リウマチ治療薬「エンブレル」、乳幼児向け肺炎球菌ワクチン「プレベナー」など、バイオ医薬品とワクチンに強みを持っており、開発パイプラインにもアルツハイマー病治療薬など有望な化合物が控えている。一方、ファイザーは高脂血症治療薬の大型新薬「リピトール」の特許切れを11年に控える中、後継品の「トルセトラビブ」が第III相試験で開発中止に追い込まれ、苦境に立たされていた。
今回、ファイザーは、ワイスを買収することでバイオ医薬品を取り込み、米国のバイオ医薬品市場の12%にまでシェアを高めると共に、新興市場へのリーチをさらに強化する考え。これにより、新ファイザーの売上高は、07年決算期の単純合算で630億ドル(約5兆6000億円)に達し、売上高世界第2位の仏サノフィ・アベンティスの413億ドル(約3兆70000億円)を大きく上回る巨大企業が誕生する。
ただ、激変する製薬業界において、スケールメリットを追求するビジネスモデルは終焉を迎えたとの指摘も多い。現在のトレンドは、アライアンス型のビジネスを展開する方向性になりつつあり、バイオ医薬品を取り込みつつも、他の追随を許さない規模で圧倒するというファイザーの戦略が吉と出るかは未知数だ。