シスメックスは、大阪府立公衆衛生研究所と共同で、鳥インフルエンザウイルスを約10分間で簡易、迅速に検出できる検査キットを開発した。様々なタイプの鳥インフルエンザウイルスの検出が可能で、将来の発生が懸念される新型インフルエンザウイルスの検出にも役立てられる可能性があるという。研究機関などを対象に限定販売し、有用性が十分確認できた後、臨床用製品として発売する計画だ。
従来のインフルエンザウイルス迅速診断キットでは、鳥インフルエンザウイルスとヒトインフルエンザウイルスを区別できなかった。今回の共同研究によって、両者の核蛋白質の構造にわずかな違いがあることを突き止め、これを目印に鳥インフルエンザウイルスのみを簡易、迅速に検出できる技術を確立した。
新型インフルエンザウイルスに変異する可能性が高いとされる「H5亜型」に加え、「H7亜型」「H9亜型」など、多くのタイプの鳥インフルエンザウイルスを検出できる。変異に影響されにくい核蛋白質を標的とするため、ウイルスの表面構造が変異した場合でも、検出は可能と考えられている。
鳥インフルエンザウイルスは現在、遺伝子増幅法で検出できるが、特別な装置や施設を使用し、半日から1日程度の測定時間が必要。今回開発された手法を用いれば、前処理した検体を試験紙に滴下するだけで済む。
鳥インフルエンザウイルスは、ヒトにも感染し重篤化を招く場合がある。ヒトへの感染を繰り返すうちに、強い感染力を持った新型インフルエンザウイルスへと変異することが懸念されている。