日本医薬品登録販売者協会会長 樋口俊一

今年の十干十二支は、「壬寅」みずのえ・とら年です。寅は慎む、助けるという意味があり、壬は亥の内在するエネルギーが増大する意味で、様々な難題が増大していく象です。
420年前の1602年は同じ壬寅の年でした。この時期はちょうど関ヶ原から大坂夏の陣までの暗躍期であり、豊臣から徳川新時代へと移行するための、数々の布石が打たれた胎動の1年でした。徳川家はその先に続く栄華の時代の幕開けのために着々と準備を進めていました。
翌年には天皇家から征夷大将軍に任じられ、その後の260年以上も続く安定した時代へと向かう、まさに夜明け前の年でした。
日本医薬品登録販売者協会は設立以来、登録販売者の資質向上に寄与すべく教育研修を主体とした組織運営をしてきました。一方、コンビニエンスストア業界から規制緩和の要望があり、登録販売者不要論につながる動きでありました。
日本医薬品登録販売者協会は登録販売者の職能団体として、登録販売者の地位保全のため、国に訴えていかなければならない使命を持っています。そのような状況の中、昨年定款を改正し、政策提言ができる組織に変わりました。
しかし、昨年は新型コロナの影響で様々な社会慣行の変更が求められました。登録販売者の皆さんも大変ご苦労されましたが、特に店頭において対面でお客様と接することが問題視されました。
医療業界もオンライン診療を進めていく中、非接触型のインターネットを活用した遠隔地からの専門家による情報提供が厚生労働省内で検討されています。
この問題を担当する当時の河野規制改革担当大臣は「お店で一度も相談なく簡単に薬が買えた」と話していました。確かに、自動販売機のように金銭の授受だけなら資格者はいりません。一般医薬品の購入にアメリカのように資格者がいなくても自由に購入できるような社会になる可能性があります。
そうなると、登録販売者という資格はなくなります。徳川幕府が長く続いたのと同様、登録販売者がこれからも末永く国民生活者から支持され、活躍できる社会にしていかなければなりません。ぜひ今年1年が大変重要な年であることを自覚し、活動していただくことを改めてお願い申し上げます。