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【海外大手製薬企業08年度決算】ファイザーに迫る特許切れの影‐ノバルティスは過去最高益更新

2009年02月19日 (木)

 海外大手製薬企業の2008年度決算が出揃った。トップのファイザーは、主力品特許切れの影響が色濃く出始め、横ばいを何とか確保。サノフィ・アベンティス、ロシュは為替変動が影響し、減収減益となったものの、主力品が軒並み二桁の伸びで成長基調の底堅さを見せた。全体的に、米国勢、欧州勢も共通して強力な主力製品、ワクチンを持つ企業の好調が目立ち、特許切れをカバーする新製品の充実ぶりも今後の成長基調を反映する格好となった。

米ファイザー

 2008年度の売上高は、降圧剤「ノルバスク」、抗アレルギー剤「ジルテック」、抗悪性腫瘍剤「カンプトサール」の米国特許切れが影響したものの、新製品などでカバーし、横ばいの482億9600万ドルを確保した。

 医療用医薬品事業は、1%減の441億7400億ドル。主力の高脂血症治療剤「リピトール」は2%減の124億0100万ドル、「ノルバスク」は25%減の22億4400万ドルとなったほか、「カンプトサール」は42%減、「ジルテック」は92%減にまで落ち込んだ。しかし、線維筋痛症治療剤「リリカ」が41%増の25億7300万ドル、抗悪性腫瘍剤「スーテント」が46%増の8億4700万ドルなどと貢献し、売上減を最小限にとどめた。

 純利益は、コスト削減に加え、昨年度に計上した吸入インスリン「エクスベラ」の撤退関連費用や為替の影響が有利に働き、ほぼ横ばいの81億0400万ドルとなった。

仏サノフィ・アベンティス

 為替変動と多発性硬化症治療薬「コパクソン」の北米での販売中止が影響し、売上高は1・7%減の275億6800万ユーロ、純利益は0・6%減の70億6800万ユーロと減収減益となった。

 医療用医薬品部門は、主力の静脈血栓症治療薬「レベノックス」が10・6%増の27億3800万ユーロ、抗血小板剤「プラビックス」が10・5%増の26億1600万ユーロ、持効型インスリン製剤「ランタス」は27・7%増の24億5000万ユーロと、主要製品が二桁成長を遂げた。ワクチン事業は、インフルエンザ菌b型ワクチン「アクトヒブ」が19・9%増と急伸したのをはじめに好調で、9・6%増の28億6200万ユーロとなった。

英グラクソ・スミスクライン

 2型糖尿病治療薬「アバンディア」の落ち込みを新製品がカバーし、増収を確保したものの、利益面では「アバンディア」の訴訟関連費用などの影響を受け、減益となった。

 売上高は、7%増(英ポンドベース)の243億5200万ポンド。医療用医薬品事業は、6%増の203億8100万ポンドとなった。心リスクの警告を受けた「アバンディア」シリーズは、34%減の8億0500万ポンドとなったが、ワクチンは新製品群が寄与し、27%増の25億3900万ポンドと大幅に売上を伸ばした。主力のCOPD治療薬「アドエア」も18%増の41億3700万ポンドと増収に貢献した。

 しかし営業利益は、アバンディアの訴訟関連費用や再編プログラムへの資金投入などが影響し、6%減の71億4100万ポンドとなった。

スイス・ロシュ

 為替変動や抗インフルエンザウイルス剤「タミフル」の備蓄減を受け、売上高は1%減の456億1700万スイスフラン(CHF)、純利益は5%減の108億4400万CHFと、昨年の二桁成長から一転して減収減益を計上した。

 医療用医薬品事業は、2%減の359億6100万CHF。売上高の半数を占める癌領域は、最大製品の抗CD20抗体「マブセラ/リツキサン」が16%増の59億2300万CHF、血管新生阻害剤「アバスチン」が37%増の52億0700万CHFと大幅に伸長した。また、抗HER2抗体「ハーセプチン」が12%増、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤「タルセバ」も23%増と軒並み二桁成長を達成した。

 一方、「タミフル」は行政備蓄の減少を受け、68%減の6億0900万CHFと大きく減らした。

スイス・ノバルティスファーマ

 医療用医薬品とワクチン・診断関連事業が二桁成長と好調に推移し、過去最高の業績を更新した。

 売上高は、9%増の415億ドル。医療用医薬品事業は、主力の降圧剤「ディオバン」が15%増の57億ドル、慢性骨髄性白血病治療薬「グリベック」が20%増の37億ドルと牽引。乳癌治療薬「フェマーラ」が20%増、骨転移治療薬「ゾメタ」が7%増とオンコロジー事業が成長を支えた。

 また、ワクチン・診断関連事業も米国政府へのH5N1型インフルエンザワクチンの出荷などが寄与し、21%増の18億ドル、子会社サンドによるジェネリック医薬品部門は、5%増の76億ドルと成長が鈍化した。

 営業利益は、売上拡大に生産性の改善が寄与し、32%増の90億ドルと二桁の増益となった。

英アストラゼネカ

 売上高は、米バイオ企業「メドイミューン」の連結化が寄与すると共に、主力製品が堅調に推移し、7%増の316億0100万ドルとなった。

 プロトンポンプ阻害剤「ネキシウム」は、米国特許切れの影響を受け、2%減の52億ドルと落ち込んだが、主力の高脂血症治療薬「クレストール」が26%増の35億9700万ドル、喘息治療薬「シンビコート」が22%増の20億0400万ドルと伸長。癌領域では乳癌治療薬「アリミデックス」が4%増、非小細胞肺癌治療薬「イレッサ」が3%増と堅調に推移し、特許切れに伴う減収分をカバーした。

米ジョンソン・エンド・ジョンソン

 売上高は、医療機器・診断部門、コンシューマー部門が伸長し、4・3%増の637億4700万ドルとなった。医薬品部門の売上高は、1・2%減の245億6700万ドル。多発性骨髄腫治療薬「ベルケード」が47・4%増の7億8700万ドル、抗リウマチ薬「レミケード」が12・7%増の37億4800万ドル、AD/HDを適応症とする中枢神経刺激薬「コンサータ」が21・3%増の12億4700万ドルと二桁成長を達成したが、主力の抗精神病薬「リスパダール」が37・8%減と大きく落ち込み、増収を確保できなかった。

米メルク

 新製品が伸長したものの、特許切れの影響で微減収となったが、利益面ではアストラゼネカからの分配利益が寄与して増益を確保した。

 売上高は1%減の238億5000万ドル。主力のアレルギー治療薬「シングレア」は2%増の43億ドル、新製品群ではDPP‐4阻害剤「ジャヌビア」が9%増の14億ドルと好調に推移した。ワクチンは、帯状疱疹予防ワクチン「ゾスタバックス」が32%増、ロタウイルス胃腸炎予防ワクチン「ロタテック」が27%増と伸長。新投入したHIVインテグラーゼ阻害剤「アイセントレス」は3億6100万ドルだった。

 純利益は、アストラゼネカからのプロトンポンプ阻害剤「ネキシム」等の米国販売に伴う分配利益が寄与し、前年度から約2・4倍増の78億0840万ドルと大幅な増益となった。

米ワイス

 プロトンポンプ阻害剤「プロトニクス」がジェネリック医薬品の攻勢で激減したものの、主力品と栄養管理製品の二桁成長でカバーし、売上高は2%増の228億ドルと増収を確保した。

 主力の抗リウマチ薬「エンブレル」は、独占販売権を持つ米国・カナダ以外の国で27%増の25億9300万ドルと大幅な売上増を達成。また、小児用肺炎球菌ワクチン「プレベナー」は11%増の27億1600万ドルと伸長。栄養管理製品は13%増の16億3400万ドルとなり、「プロトニクス」の58%減をカバーした。

米イーライリリー

 売上高は、主力品が堅調に推移して増収を確保したものの、利益面では米バイオ企業「イムクローン」の買収費用と抗精神病薬「ジプレキサ」の訴訟関連費用が大きく影響し、純損失を計上した。

 売上高は9%増の200億3780万ドル。主力の「ジプレキサ」は1%減の46億9600万ドルと微減となったが、抗うつ薬「シンバルタ」が28%増、インスリン製剤「ヒューマログ」が18%増と大幅に伸長。抗癌剤「ジェムザール」も8%増と堅調だった。

 利益面では、47億3000万ドルを投じたイムクローンの買収やジプレキサの訴訟関連費用が大きく影響し、営業損失が12億8100万ドル、純損失が20億7100万ドルと赤字を計上した。

米ブリストル・マイヤーズ・スクイブ

 主力品が軒並み好調で、売上高は13%増の205億9700万ドルとなった。医療用医薬品事業は、13%増の177億1500万ドル。主力の抗血小板剤「プラビックス」が18%増、抗精神病薬「アビリファイ」も30%増、抗HIV薬「レイアタッツ」は15%増と主力製品が順調に推移。新製品の抗リウマチ薬「オレンシア」も91%増と好調な滑り出しを見せた。



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