2022年度診療報酬改定について、中央社会保険医療協議会が9日に厚生労働相に答申を行い、全体像や点数がほぼ確定した。薬局薬剤師にとって今回の改定は、対人業務を手厚く評価する一方、対物業務の評価は縮小するなど業務の評価のされ方が従来と大きく変わっていくターニングポイントになりそうだ。
今回の改定で、従来の調剤料と薬剤服用歴管理指導料が、対人業務と対物業務という観点から三つの項目に再編成される。
これまで調剤料で評価していた処方内容の薬学的分析や調剤設計等と、薬剤服用歴管理指導料で評価していた薬歴管理等の業務の評価を合わせて「調剤管理料」を新設。調剤料で評価していた薬剤調製や取り揃え監査業務は「薬剤調製料」として評価する。薬剤服用歴管理指導料で評価していた服薬指導等の業務は「服薬管理指導料」となる。
薬局薬剤師の対人業務と対物業務を切り分け、メリハリをつけて評価する基盤ができた。次回以降の改定でこの傾向はさらに強まるだろう。対物業務の効率化と対人業務の推進に取り組む必要がある。
リフィル処方箋の導入もポイントになる。リフィル処方箋とは、一定の期間内であれば医療機関を受診しなくても繰り返し利用できる処方箋のこと。患者は、薬をもらうためだけに医療機関に出向き受診する必要はなくなり、薬局で薬を受け取ることができる。同じ薬を投与し続けて良いかどうか、薬局薬剤師の判断が重要になる。
いずれも大きな変革だが、今後どこまで対人業務が評価されるようになるのか、リフィル処方箋制度がどこまで発展するのかは、現場の実績とエビデンスに左右される。数多くの薬剤師が実践し、その効果を数値で示すことが職能発展につながるだろう。
一方、病院薬剤師にとっては、周術期や術後疼痛管理などの領域で新たな評価を得る改定となる。
手術室の薬剤師が病棟の薬剤師と連携して実施する薬学的管理の評価として「周術期薬剤管理加算」が新設される。手術後の管理についても、所定の研修を修了した専任の常勤薬剤師を含む術後疼痛管理チームによる疼痛管理への評価が新たに設けられる。
これらの領域では、以前から薬剤師が力を発揮してきた。診療報酬はなくても実績や成果を出し続ければ評価につながることが示された。他の領域でも同様のアプローチを続けることが必要だ。
大きな柱である病棟薬剤業務実施加算は、今春から小児入院医療管理料を算定する病棟でも算定可能になり、対象が広がる。
しかし、日本病院薬剤師会が要望してきた地域包括ケア病棟や回復期リハ病棟での同加算の算定は実現しなかった。中小病院の薬剤師が活躍する場を広げるためにも、これらの病棟での評価は欠かせない。引き続き、次回改定の課題となるだろう。