6年制薬学教育の改革が今年に入り本格化しつつある。1月には文部科学省が薬学部の2021年度薬剤師国家試験のストレート合格率をまとめた実態調査結果を公表し、15年度薬学部入学生の21年度時点における退学率を調べた初の調査結果も明らかにした。
その結果、ストレート合格率が3割に満たない大学が5校で見られたほか、退学率が5割を超えた大学もあった。約7割の学生が薬剤師国家試験に合格できる学力水準にはなかったと考えられ、退学率に至っては半数以上の学生が6年間授業を全うできないという異常事態である。かねて懸念されていた実態が裏付けられた格好だ。
それだけに、薬学部入学定員の抑制を求める大合唱が沸き起こっている。既に定員抑制の方向性は固まったが、文科省の中間取りまとめに入学定員抑制の具体策がなかったことに、厚生労働省の検討会で不満が噴出。14日に開かれた新薬剤師養成問題懇談会(6者懇)でも国が主導するようクギを刺す発言が相次ぎ、焦点は国が考える定員規模に移りつつある。
一連の問題は、6者懇で日本病院薬剤師会の木平健治会長が「大学が設立され過ぎたのが根本的な問題。以前から多くの人が指摘していた」と発言した内容に尽きる。誰もが分かっていて、ずっと見過ごされ続けてきたのである。今になって国が対応に乗り出したのは、タイミングとして遅きに失したと言われても仕方がないだろう。
定員抑制は問題解決の入口に過ぎない。適正な入学者数に落ち着き、学生の質を確保できた先にも、薬学全体が抱えている様々な問題が待ち構える。
実際、薬剤師過剰時代への対応のほかにも、足下の課題は山積している。例えば4年制や大学院の問題がある。私立大学では国試の受験資格が得られなくなった4年制に頭を悩ませるところも少なくない。一方、大学院博士課程への進学者の減少は薬学にとどまらず、日本のアカデミア全体の問題でもあり、解決は容易ではない。
今後、6年制薬学教育を通じて地域医療の現場に薬剤師を充足させ、創薬に貢献する研究者を育成し、さらに将来の教員となる大学院博士課程進学者の減少を食い止めることができなければ、薬学の発展が危うくなる。これらの課題に対して、国の検討会の議論を超えた総合的な協議が必要になってくるだろう。
既に薬剤師の養成・確保・教育・資質向上といった部分に関しては議論が進んでいるが、それ以外の部分については十分な解決策が見えているとは言えない。
極めて難しい問題ばかりではあるが、今回の入学定員抑制をはじめとした一連の問題をきっかけに、全ての薬学関係者が薬学の将来をどう考えるのかという議論を活性化させ、一丸となって適切な方向性を見出していく責任があるのではないか。