オーガナイザー
米田誠治(鈴鹿医療大薬)
樋口恒彦(名市大院薬)
シスプラチンが臨床導入されてから40年以上が経過した現在においても、白金製剤は様々な固形癌の化学療法に用いられている。白金製剤は全て電気的に中性なcis型白金(II)単核錯体であり、同様の基本骨格を用いて分子設計すれば、有効な抗腫瘍効果を発揮する白金錯体を得ることができる。
しかし、近年においては、副作用の軽減および白金製剤に対する交叉耐性の克服を念頭に、白金製剤とは基本骨格が大きく異なる白金錯体、あるいは白金以外の白金族元素(Ru・Rh・Pd・Os・Ir)を用いた「型破りな」創薬研究が進められている。白金族元素の金属錯体は加水分解を受けにくいため、金属錯体特有のユニークな幾何学構造を水溶液中で維持しながら、標的となる生体分子と結合することができる。また、機能性配位子を導入することで、従来の白金製剤とは異なったアプローチによる創薬が可能になる。
本シンポジウムでは、白金族元素を用いた癌治療薬および癌診断薬の創薬研究を紹介し、無機医薬品化学の新たな展開を議論する。
(米田誠治)