文部科学省と経済産業省の地域クラスター事業を支援する産学官における関係機関の連携、情報共有化、交流促進などを図るための組織として、「全国イノベーション推進機関ネットワーク」が4月1日からスタートする。
文科省が取り組んでいるのは「知的クラスター」創成事業。2004年度から開始され、07年度からは第I期の成果を踏まえ、クラスターとしての発展を加速させるための第II期事業が展開されている。
このクラスターは、地域のイニシアティブのもとで、地域独自の研究開発テーマとポテンシャルを持つ大学をはじめとした公的研究機関を核にし、地域内外から企業も参画して、▽戦略的な事業実施▽知の集約の活用(大学、公的医療機関を核としたイノベーションの創出)▽世界レベルの技術革新――に取り組んでいる。第II期としては現時点では、全国で6クラスターが活動している。
経産省が進めるのは「産業クラスター」計画。地域において、イノベーションやベンチャー企業が次々と生み出されるクラスター形成を目指している。全国18のプロジェクトで、地域の経済産業局と民間の推進組織が一体となって、新事業に挑戦する地域の中堅・中小企業1万社、約290校を超える大学(工業高等専門学校含む)とが緊密に連携、協力している。
01年度から事業が開始されており、クラスター立ち上げ期の第I期では,「顔が見えるネットワーク」の形成が図られた。現在は第II期事業として、このネットワークをベースに、ビジネスマッチングや産学官連携による研究開発プロジェクトなどを立ち上げ、クラスター参画企業の新事業創出に向けた取り組みが行われている。
両クラスターは、事業開始当初からお互いが連携し、地域発の自律的・自発的なイノベーションの推進を図り、地域活性化を目指している。
しかしここにきて、▽地域内で不足する資源をどのように他地域から求めるのか▽優秀なコーディネーター人材をどのように確保するのか▽地域ネットワークでは対応が困難な国際的な展開をどのように図っていくのか――など、各地域の産学官支援機関や、ネットワークが抱える共通の課題が浮き彫りになってきた。
そうした課題に取り組むために、「全国イノベーション推進機関ネットワーク」の発足となった。
同ネットワークでは、地域発イノベーションの推進を担う支援機関が、共通認識のもとで全国的なネットワークを構築し、▽支援機関相互の情報共有▽交流促進▽共通課題の解決に向けた活動――に取り組むことによって、広域的な産学・産産連携の促進やクラスター間の連携強化をさらに図り、これによって地域活性化を推進することになっている。
ここでポイントは、“地域の活性化”だ。日本が科学創造立国として成り立っていくためには、どうしても地方に活力が必要との認識がある。しかし現実は、東京一極集中の観がある。地方の企業が成果を得ると、効率化を求めてか、東京に進出してくる。また、製薬企業などの動向を見ると、東京に本社機能を集中する傾向が見られる。
今回の取り組みは、こうした一極集中のアンチテーゼだ。「文科省と経産省が本気で地方活性化に取り組む姿勢を見せた」と見る人もある。この取り組みが全国に広がり、今年が本当の意味で“地方活性化元年”になることが望まれる。