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CROの質向上は最大の武器に

2009年04月03日 (金)

 臨床試験の国際競争が激しさを増してきた。特にアジア地域では、韓国などが国際共同臨床試験を受け入れる体制を整えている。本紙でも6回にわたって「治験先進国・国際舞台に挑む」で紹介したように、韓国は国家を挙げた取り組みにおいて、日本を凌駕する勢いを見せる。サッカーワールドカップや野球のWBCでの活躍など、スポーツでも団結した国民の応援を受けるのと同様だ。

 また、シンガポールでも経済開発庁(EDB)が中心となって、バイオ医科学産業の育成に注力しており、医薬品製造、研究開発などと共に、強大な官民バイオクラスターをベースに、前期臨床試験の受託に乗り出した。小規模ながらも、さまざまな人種が混在している人口構成や、公用語が英語である点も強みになっている。

 これらアジア諸国の動きに焦燥したわけではないだろうが、日本の行政も治験活性化計画を策定したり、国際共同治験に関する基本的考え方(審査管理課長通知)を打ち出すなど、本腰を入れて国際共同治験への対応に着手してきた。

 だが、現状はというと、韓国でも導入している国際的に共通の臨床試験方法とは異なる日本独自の用量設定などが障壁の一つになり、国際共同治験届け出数は2007年度の38件から08年度は1月までで68件へと件数は増加しているものの、韓国ほど活況を呈してはいない。国家的支援による治験実施環境のインフラ整備面でも、後れを取っていると言わざるを得ないだろう。

 その意味において、今年2月26日に日本CRO協会(JCROA:中村和男会長)と、米国CRO協会(ACRO:ディレク・ウィンスタンリー会長)、欧州CRO協会(EUCROF:アント・クルノー会長)が、国際的な医薬品開発における課題解決に向け、3極のCRO協会が連携して取り組むことを盛り込んだ「東京宣言」を締結したことは意義深い。

 内容は、「医薬品の開発は、世界中で治験を実施する必要性を伴うグローバルな取り組みであり、豊富な経験と専門知識を有する開発業務受託機関(CRO)は、このプロセスに不可欠な存在」「CROの基本的責務は国際的に不変であり、臨床業務基準を統一する」など7項目である。 国際的にCROが活動する際に、米欧と共に、日本が医薬品開発における3極の一員として、リーダーシップを発揮する自覚を促すものだとも受け取れる。

 また、JCROAは今月1日からモニター教育研修制度(継続研修)をスタートさせた。受託業務の中核を占めるモニタリングで、JCROAに所属するモニター(CRA)の業務実施レベルを均質化し、業務実施水準の底上げを図ることは重要である。

 これまでのモニター教育研修制度は、導入研修用に07年4月から実施されているものだが、今回はこれを継続研修用に発展させると同時に、修了者を対象に「モニター認定制度」を設けた。

 研修制度は、JCROAが定める基準(カリキュラムガイドライン)に基づいて各社が研修プログラムを策定・実施し、修了試験合格者に、導入研修ならば修了証を、継続研修ならばモニター認定証を発行する仕組みだ。

 やはり、何をするにしても「質」の高さは重要であり、最大の武器でもある。

 設立15周年を迎えたJCROAだが、日本のCRO産業成長に向け、グローバルな視点に立った本格的な事業展開は、ここからが正念場だ。



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