4年制新卒者の受験という意味では、最後の薬剤師国家試験(第94回)の結果が3日に発表された。合格率はほぼ例年通りの74・40%であった。ただし、受験生は過去最多の1万5189人で、合格者は昨年に続き1万人台に達した。
今年の合格発表で注目されたのは、何といっても新設大学の高い合格率だろう。私立平均75・32%に対し、愛知学院大学の96・21%を筆頭に、90%を超える合格率を出した6校は、全て新設大学だ。しかも、愛知学院大、崇城大学(94・96%)、同志社女子大学(92・97%)、金城学院大学(91・41%)の4校は05年新設の大学だった。既卒者を持たない強みともいえる。また、新設に限ったことではないが、各新設大学の定員・実入学者数を見ると、相応の“絞り込み”も効いているようだ。
その一方で、奥羽大学(68・71%)、国際医療福祉大学(76・06%)は同じ05年組でも、かなり苦戦が強いられたようだ。
各校で様々な“自助努力”により高い合格率を目指しているが、6年制薬剤師が卒業する2012年からは、平均して1万1500人ほどの新たな薬剤師が世に送り出され続ける。
これに対し、新卒者受け皿の主体となった保険薬局の状況はといえば、特に分業先進県・地域では、もはや分業率の伸びは見られず、枚数拡大による増収は見込めない状況にある。いかにかかりつけ薬局として“顧客化”を図っていくかが目前の課題となっているほどだ。さらに、医療費の現状維持あるいは削減傾向が、今後大幅に改善することは見込まれず、相対的に薬剤師需要が大きく伸びていくとは考えにくい。
一方、ドラッグ業界は規制緩和の中で、新たな“専門家”を擁する販売体制が求められ、同時に競争激化による安売りのみからの脱却として「併設型」への展開が進みつつある。また、第1類薬を薬剤師が対面で販売していくことが、スーパーマーケットや異業種との差別化につながるとの考えを強め、厚労省に対して第1類薬を増やすよう働きかけていく方針だ。
そのような背景からか今春、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)が、薬学生にドラッグストアへの理解を深めてもらう取り組みを行い、注目を集めている。それは埼玉県の城西大学薬学部(学部長白幡晶氏)とJACDSが協力し、春休みを利用して行われた「コミュニティーファーマシーインターンシップ」プログラムだ。
ドラッグストアではかねてから「薬」の専門学校生を受け入れてきた。直近では、登録販売者制度を先取りし、1年間にわたる有給“研修”が定着している。ただ初期の薬局実習のように1週間、薬学生を受ける“本格的な実習”は今回が初めてだった。
新薬剤師が1万人を超す時代を迎えたが、未だ学部卒業生の多くが目指すのは保険薬局。ドラッグストア側の求人には応え切れていない状況が続いている。
白幡学部長は「改正薬事法による医薬品販売現場の変化を肌で感じてもらうのが狙い」というが、就職の選択肢として意識させる狙いもある。これを受ける小田兵馬JACDS副会長も「現場経験による授業への影響、職業選択の面でもよい経験になる」と、初の試みに非常に積極的だ。かけ声に終わらない就職先の確保に向けた建設的な取り組みといえる。
ただ、気になるのは入学者数に比べ、国試受験者が“圧縮”される点だ。前段階で「適正な質、数の学生確保」を願いたい。