軟膏混合を機械で効率化‐対人業務充実、待ち時間減
ハザマ薬局西町医療センター店(豊中市)は患者とのコミュニケーションに割く時間を増やそうと対物業務の機械化を進めている。その一つとして導入したのが、大同化工の軟膏ミキサー「マゼリータ」。人の手で軟膏剤を混合する場合と比べて作業時間を約3分の1に短縮することに成功。薬剤師に余裕が生まれ、対人業務に力を入れやすくなった。患者の待ち時間緩和にもつながっているようだ。
同薬局は大阪北部の千里中央駅から徒歩15分ほどの医療モールの一角に立地。近隣の泌尿器科・内科・皮膚科併設クリニックなどから月間で約1000枚の処方箋を応需している。漢方薬などを中心にOTC約100品目を取り扱うなど、健康サポート機能の充実にも力を入れている。
同薬局は、薬を取り揃えて患者に渡す前に必要事項を確認し、その上で先に服薬指導を行う業務フローを採用。患者とのコミュニケーションに集中できる時間を確保して服薬指導の質を高めようと取り組んでいる。相談しやすい雰囲気を作ることで、患者から悩みや不安を打ち明けてもらいやすくなる。漢方薬やOTCの提案、販売にもつながるという。
薬剤師2人と事務員1人で運営するシフトが多い。処方箋応需時には、1人の薬剤師が服薬指導、事務員がピッキング、もう1人の薬剤師が鑑査という役割分担で業務を回している。担当業務を明確に切り分けて業務の質と効率性を高める考えだ。
しかし、この役割分担が崩れてしまうケースがあった。泌尿器科・内科・皮膚科併設クリニックで軟膏剤を混合処方された患者が立て続けに来店した時だ。
当時、軟膏剤の混合に1件当たり10分程度を要し、その間、薬剤師は他の調剤関連業務に取り組めなくなっていた。そのため、服薬指導を担当する薬剤師が調剤室まで鑑査などを手伝いに行っていた。
管理薬剤師の内田文隆氏は「患者様を待たせてはいけないと気が焦って、患者様から十分に話を聞き取れないこともあった。早々に服薬指導を切り上げて調剤や鑑査を手伝いに行かなければならなかった」と振り返る。
そこで、軟膏剤の混合にかかる負担を軽減しようと、大同化工の軟膏ミキサー「マゼリータ」を昨年9月に導入。1件当たりの調剤時間を3~4分ほどに短縮することに成功した。また、混合にかかりきりになっていた薬剤師は機械化でその作業から解放。ミキサーに混合させている間に、次の患者の調剤や鑑査に取りかかれるようにもなった。服薬指導担当の薬剤師は、応援に回る必要がなくなり、患者との話し合いに集中しやすくなった。
高い均一性で軟膏剤を混合できるメリットもある。人の手で混ぜる場合、スキルの差などから均一性にばらつきが生じることがある。内田氏は「均等に混ぜて初めて意図した通りの薬効を出せる。不十分に混ぜられていると、どちらかの薬剤の効果しか出ないことがあり得る。マゼリータで混合すれば、均一性も高く、見た目もきれい。安心して手渡せる」と話す。
操作は大きく3ステップからなる。まず、複数の軟膏剤を詰め合わせた容器を専用アダプターに取り付けて、ミキサー内部の回転機にセット。次に、ミキサーの蓋を閉めて攪拌時間を選び、スタートボタンを押す。回転機の円運動で軟膏容器内部に遠心力が働き、概ね30秒ほどで混合が完了する。硬めの軟膏剤の場合には時間を長めに設定して攪拌する。
来局しやすい薬局づくりを
導入の決め手になったのは操作の簡便性だ。他社製品の場合、軟膏容器をアダプターに取り付けた後、回転機の円運動で軟膏容器が外れてしまわないよう上部からカバーをかぶせる必要があるが、マゼリータはそのカバーを必要としない。また、そのアダプターを回転機に取り付ける時に、差し込む向きを気にする必要がない点もメリットという。差し込み口に合うように向きを調整してセットしなければならない他社製品もある。
人員を増やして課題を解決することもできたが、機械を購入した方が人を雇うよりも安く済む。マゼリータはレギュラーモデルで定価82万4000円(税別)。同薬局に導入後、他の系列2店舗でも導入した。
同薬局は、個人宅のほか、7月から高齢者施設の訪問薬剤管理指導にも乗り出した。診察後に迅速に薬剤を届けるよう求められるケースも少なくないため、調剤にかかる時間を数分でも短縮できる意義は大きいという。
機械で対物業務を効率化して対人業務に割ける時間を増やすのは、同薬局を経営するファルメディコの企業方針だ。対人業務の充実は処方箋を持たない人に来局してもらいやすい薬局づくりにも役立つ。
内田氏は、「丁寧な服薬指導をコツコツと積み重ねることで信頼関係が生まれる。相談しやすい薬局だと感じてもらうことで健康サポート機能を発揮する機会を増やせるはずだ」と期待を込めている。
ハザマ薬局西町医療センター店(大同化工)
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