処方箋入力業務を効率化‐規格の違いもAIが学習
全国で400以上の薬局を展開するメディカルシステムネットワークでは、NeoXが開発した処方箋入力支援サービス「薬師丸賢太」を、テスト導入を含め約70店舗の薬局で導入している。いち早く取り入れた「なの花薬局米が浜店」(神奈川県横須賀市)は、対人業務の充実を進めており、健康サポート薬局や地域連携薬局の認定を取得すると共に、在宅患者や施設の訪問も行っている。
横須賀中央駅の近くに位置する同薬局の開設は3年前の2019年になる。現在、応需する処方箋の多くは同じビル内にある整形外科や皮膚科からであり、1日の処方箋応需枚数は約100枚、1カ月では2200枚前後という状況。同ビル内の皮膚科は横須賀市内全域から患者が集まることから、この皮膚科からの処方箋が特に多いが、患者の年齢や性別に偏りは見られないという。
また、近くに横須賀共済病院があることから周囲には多くの調剤薬局が控えている。同薬局の小高良乃祐薬局長(薬剤師)は「その中でも選ばれる薬局を目指す」との方針で、健康サポート薬局や地域連携薬局の認定を取得したほか、在宅患者の訪問も行っている。
そうした同薬局の業務を支える一つが、AI-OCRの薬師丸賢太だ。以前から同薬局では入力作業の簡素化のために処方箋のQRコードを読み取っていたが、薬師丸賢太の導入責任者である出田幸太郎氏(なの花東日本)はQRコードのついていない処方箋への対応を検討していた。
同薬局の西牟田久美子スタッフリーダーは薬師丸賢太が導入された経緯を「(QRコードの有無など)処方箋の規格が異なる場合でも入力ミスを減らすため、当時使用していたQRスキャナーと使い比べてほしいと社内から依頼があった」と振り返り、「実際に間違いが減っている体感はある」と語る。導入を決めた出田氏は「手書き処方箋以外はデータ化できるため、効率化だけではなく医療安全にも大きく寄与している」と述べた。
導入の目的であったQRコードのない処方箋の対応以外にも、以前使用していたスキャナーをそのまま使用できることから導入時の現場負担が少ない点も特徴で、同薬局のスタッフは高く評価している。加えて、AIによる読み取り精度の向上も好評だ。
薬師丸賢太の使用に際して、処方箋をスマートフォンやスキャナーで読み取ってからレセコンへ反映されるまでかかる時間は10秒程度。同薬局に勤務する薬剤師は「スキャンをしてすぐに処方内容がレセコン画面に出るので使いやすい。導入当初と比べ入力間違いや返戻がとても少なくなっており、使えば使うほど精度が上がるので賢いと思う」と評価した。学習能力の高さから、西牟田氏は「読み取り精度のさらなる向上だけではなく、入力後や投薬後の確認、突合点検など現在は人間が確認しなければならない業務も今後対応できるようになるのでは」と薬師丸賢太が対応できる業務の広がりに期待を寄せる。
他職種との連携も積極推進
進展する薬局業務のシステム化について、小高氏は「オンライン服薬指導や電子処方箋などの新たな制度に対して、薬師丸賢太が今後どうつながるのか興味がある」と処方箋入力以外の場面での活躍も望んでいる。
現在、薬局業務においては、“対物から対人へ”という流れがある。「薬を飲んだ後の効き具合の確認や、薬が飲みにくい場合に飲みやすくなるための提案などアフターフォローも行っている」(小高氏)という同薬局では、業務の対人化を実現していると言えよう。
小高氏は、対人業務へのシフトによって患者と話す機会等が増えたことにも言及し、「医師に提案できることが増えており、そうした役割も重要。最近は病院側も地域の薬局に出した処方箋について意見を聞きたがっている」と説明。薬局外との連携を深めていく必要性を指摘している。
今後を見据え、「薬局内だけで業務をするのではなく、外に出て行くような業務中心に変わっていくのではないか」との考えを提示。医師をはじめ、看護師やケアマネジャー等との連携を一層深めていくと共に、時代が変わっても選ばれ続ける薬局を実現するため、対人業務へのシフトを積極的に進めていく考えを強調する。
なの花薬局 米が浜店(NeoX)
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