5疾病6事業の枠組み整備
東京都薬剤師会は、薬剤師認定制度認証機構(CPC)から「生涯研修認定制度」(G26)の承認を取得し、薬剤師の知識底上げと倫理観醸成を通じて、地域住民から信頼されるかかりつけ薬剤師の養成に乗り出す。医療計画制度で医療提供体制の整備が定められている「5疾病6事業」に照準を合わせ、疾患ごとにカリキュラムの全体像となる「カリキュラムツリー」と個々の薬剤師が次に学ぶべき科目・項目を判断できる「カリキュラムマップ」を構築し、基礎から臨床まで体系立てて学習できる枠組みを整備する方針。
都薬が目指す生涯教育プログラムのコンセプトは、5疾病(癌・脳卒中・心筋梗塞等の心血管疾患・糖尿病・精神疾患)の疾患ごとにカリキュラムツリー、カリキュラムマップを作り、薬剤師が系統立てて学修できるというもの。疾患を学ぶ上で身に付けておくべき薬理や製剤学、病態科学、臨床薬学など基礎的な知識が根の部分で、疾患のメカニズム・症状、薬剤の効能・効果、作用機序と幹や枝の部分へと広がるイメージだ。例えば、循環器疾患であれば心臓や血液、心疾患のリスク因子となる「高血圧」のこと、高血圧に関連した様々な心疾患、そこで使われる治療薬を関連づけながら、学びを深めることができるようにする。
社会的に話題となっているテーマ、疾患を学ぶ上で押さえておくべき学習内容があれば必要に応じてその疾患のカリキュラムツリーに加えていく。薬剤師が理解を深めていく中で学習達成度の把握、どの部分の知識が足りていないのか、次に何を学べばいいかなどを判断できるようカリキュラムマップも提示する。
現在、各疾患で生涯学習プログラムの構築を進めており、一部のプログラムについては間もなく公表する予定。コンテンツは場所や時間に関わらず閲覧が可能なオンデマンド形式で配信し、e-ラーニングで受講できるようにする。都薬には大学教員2人が理事者として在籍しており、都内10大学と連携を進め、薬剤師として何を学んでおかなくてはならないのか科目・項目を考える。「呼吸器疾患」は昭和大学と連携し、間もなくカリキュラムツリー、カリキュラムマップのひな形が固まる見通しだ。薬局製剤でよく使われる「一般用漢方薬」についても漢方薬メーカーと連携し、生涯学習プログラムを提供していく方針。患者の身体状態から体質や抵抗力、病気の進行度を見極める「証」を理解し、一般用漢方製剤を提案できる薬剤師を養成する。
そのほか、「心疾患」や「糖尿病」も系統立てて学べるようにし、この2年間で5疾病に関するカリキュラムツリー、カリキュラムマップを確立する。患者の症状からどんな疾患が疑われるか薬剤師が判断できるよう「症候学」もシリーズ化する計画である。
一方、教育コンテンツについては、当面はe-ラーニングの教育コンテンツを提供している企業と提携し、共同で開発を進める。将来的には都薬が単独でコンテンツ作成を行う方向だ。
薬物療法の多様化・個別化で劇的な変化を遂げる中、地域住民のニーズに対応するためには薬剤師にも最先端の知識が求められている。これまでも制度や薬物治療に関する研修を提供してきたが、その土台となる大学で学ぶべき基礎的な内容も昔と現在では乖離が生じているのが現状だ。
永田泰造会長は、「自分たちが受けていた薬学教育と今とでは大きく違う。われわれは科学者としての養成のための教育は受けているが、医療人としての教育は受けていない。昔学んできた知識だけでは患者さんが抱える課題を解決できないのではないか」と話す。
その上で、「薬剤師が持つ知識の整理を行う必要がある。医療人としての考え方に立ち、先進的な知識を修得することによって、患者さんが抱える課題に応えられるようになるのではないか」と強調する。
薬剤師自身が処方箋を受ける中で地域に多い代表的な疾患、1人の患者と向き合う中で知識の習得が必要だと感じた疾患など「薬剤師が学びたいと思った内容について、個人が選択できるよう全体像を構築していくのが都薬の役割」と話す。
東京都薬剤師会 生涯学修支援センター
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