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高齢者・糖尿病患者、個別管理目標の体制作りを

2016年6月17日 (金)

 先に京都で開かれた日本糖尿病学会で、同学会と日本老年医学会の合同委員会が設定した「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」が公表された。

 同目標値は、合同委員会が作成を進めている高齢糖尿病患者の適切な評価に基づくよりきめの細かい個別の管理目標を定めた「高齢者糖尿病の診療ガイドライン」の一環として策定されたものだ。

 2012年の国民健康・栄養調査によると、全年齢での糖尿病が強く疑われる者の割合は、男性で15.2%、女性で8.7%(合計約950万人)に上る。それが70歳以上の高齢者に限ると、男性23.2%、女性20.8%にまで増加しており、加齢に伴う糖尿病発症頻度の上昇がうかがい知れる。

 特に、75歳以上では、認知症、うつ、ADL(日常生活動作)低下、サルコペニア(筋肉の喪失)、転倒・骨折、フレイル(健常な状態と要介護状態の中間の状態)などの老年症候群が増え、生活自立が障害されやすくなる。

 今回の「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」は、年齢、罹病期間、臓器障害、低血糖の危険性、サポート体制などを個別に設定している熊本宣言(13年6月)の趣旨を承継。これらの項目に、認知機能や基本的ADL、手段的ADL、併存疾病などを加えて、高齢者が抱えている様々な問題を考慮した個別設定になっている。

 具体的には、患者の特徴・健康状態からカテゴリーをI、II、IIIに分類。特に重要な指標として「認知機能」と「ADL」の評価に重きが置かれている。カテゴリーIは、「[1]認知機能正常かつ[2]ADL自立」、カテゴリーIIは、「[1]軽度認知症障害~軽度認知症または[2]手段的ADL低下、基本的ADL自立」、カテゴリーIIIは、「[1]中等度以上の認知症または[2]基本的ADL低下または[3]多くの併存疾患や機能障害」としている。

 患者の特徴・健康状態を三つのカテゴリーに分類したのに加えて、重症低血糖が危惧される薬剤(インスリン製剤、SU剤、グリニド薬など)の使用を考慮して、「7.0%未満」「7.5%未満」「8.0%未満」の血糖コントロール値を設定している。

 これらの目標値は、重症低血糖によるイベント増加や認知症悪化を考慮して、認知機能の低下している患者や高齢者では、やや高めの目標でも可能としているのが大きなポイントだ。

 だが、その一方で、長期からの厳格な糖尿病治療がイベント予防の有用性が分かっている。従って、より低血糖発作の副作用の少ない薬剤の使用をファーストラインとして推奨するのかどうかは今後の課題として残っている。

 さらには、大規模臨床試験でエビデンスの出たSGLT2阻害薬を高齢者のガイドラインでどう位置づけるのかの検討も必要となるだろう。

 血糖コントロール値を定める上で重要な指標となっている年齢については、患者によって実年齢と身体的機能が異なる可能性があるため、そのギャップを埋めるためのエビデンスの構築も重要だ。

 諸外国より一足早く高齢化社会を迎えたわが国が、初めての「高齢者糖尿病の診療ガイドライン」を世界に向けて発信する意義は大きい。よりきちんとしたガイドラインにするために、薬剤師もエビデンス構築に協力できる体制作りが急がれる。




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