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大転換期迎えた医薬品卸業界

2009年02月13日 (金)

 医薬品卸業界は何度目かの大転換期を向かえた。

 主要広域卸各社の2009年3月期第3四半期の業績が発表され、通期業績予想の修正も出された。メディセオ・パルタックホールディングスは、前回予想に比べ売上高で180億円減の2兆4720億円、東邦薬品は同じく100億円減の8300億円とする大幅な下方修正となったが、第3四半期の業績も含め、業界の中では想定の範囲内であり、特段、驚きを伴うニュースでもなかった。

 世界的に不況の嵐が吹きすさぶ中、生命関連製品を核とする医薬品産業は他の産業、特に製造業や不動産業に比べれば、相対的に影響は小さいと思われている。車やカメラ、ましてや家を買うことは控えても、生活が苦しいからといって薬をのまない患者はいないからだ。

 今回、不況の影響を若干免れているとしても、日本の医薬品産業成長の前には、薬価制度なる難敵が常に立ちはだかっている。この強敵に勝って、もしくは負けずに企業を存続させる術を駆使してきたのであり、現在も続けられている。

 医薬品卸の業界再編と企業体変革の動きも激しくなっている。

 年商4兆円超の巨大卸誕生かと、業界内外に大きなインパクトを与えたメディ・パルHDとアルフレッサHDの経営統合は、昨年10月10日の合併記者会見から奇しくもちょうど四半期後の1月9日、突如白紙撤回された。理由は、公正取引委員会の二次審査への移行が濃厚になったことから、シナジーを得られると踏んだ4月1日には間に合わないためとされている。

 医薬品卸の本分は、高度救急、難治性疾患など特殊な医療を除けば、各地域で住民のために行われている地域医療へ、医薬品の安全で安定的な供給によって貢献することである。某卸社長の、「地方ならば年商1000億円程度で生きている卸も存在する」という言葉を借りるまでもなく、日本の医薬品卸は、何兆円規模にならなくても、企業を存続させて地域医療に貢献している。

 中間流通業の卸は文字通り、製品を作って供給する川上の製薬企業と、製品を使用(購買)する川下の医療機関、薬局・薬店の中間に位置する。上手にも下手にも強い立場にはなれないのが卸だ。弱い立場で生き残るには、コストを限界まで下げることや、組織体を強化するなど、相応の覚悟と実行が伴わなければならない。

 新年度の4月1日には、東邦薬品が純粋持ち株会社を立ち上げると共に、事業会社の社長も代わる。東北・新潟のトップ卸のバイタルネットと、近畿圏の有力卸ケーエスケーも共同持ち株会社を設立する。メディ・パルHDは、10月1日に純粋持ち株会社への移行を発表するなど、今年の動きは例年にも増して激しい。

 つい先日、アルフレッサグループの経営トップ人事が発表された。古参の卸関係者は、「また一つの時代が流れ去った」と感慨深げに見るだろう。

 企業存続のためには冷徹な判断も必要かもしれないが、患者、国民の生命と健康を守るという重責の一端を担う医薬品卸が、他の産業のように安易に社員等をリストラし、家族共々路頭に迷わし、健康をも脅かす生活困窮の事態を生じさせれば、社会的イメージは最悪だ。

 これまで以上に知恵を絞り、流通改善を含め、コア事業の医薬品流通での努力は当然のこと、生き残っていくための斬新な発想によるビジネス創出など、医薬品卸には新しい血の流入と共に、新たな取り組みも求められている。



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