日立製作所と新潟大学は27日、地域資源を活用して住民の健康を支える社会的処方の多地域展開を目指し、音声認識と生成AIを活用したリンクワーカー業務支援システムを開発し、9月1日から、新潟県十日町市の特定保健指導業務に試行導入し、有効性を検証すると発表した。
同システムは、リンクワーカー(保健師など)が行う住民との面談内容をリアルタイムでテキスト化した後、地域資源の紹介に必要な住民の健康状態や生活状況、希望する支援内容などの情報を、項目別に即座に整理・要約してレポート作成を支援することで、リンクワーカーの業務の効率化と面談時の情報の取得漏れ防止を実現している。
さらに、要約・整理された面談内容と、予め蓄積された地域資源の利用データに基づいて、住民の課題や要望に応じた適切な地域資源の候補を、対話形式で検索・提示する。
これまで両者は、十日町市の協力を得て、糖尿病患者に地域の栄養指導やスポーツクラブを紹介する小規模実証「とおかまち健康の処方箋」の取り組みを進め、血糖コントロールの有意な改善と持続的な生活習慣の変化を確認している。
一方、患者に地域資源を紹介するリンクワーカーの業務において、面談記録の作成に多くの時間と労力を要することや、地域資源の数や種類が拡大した場合の紹介先選定方法が課題であることが明らかにしている。
そこで両者は、医療・介護の専門人財や地域資源が限られる中でも、リンクワーカーが効率的かつ的確に住民支援を行えるよう、面談記録作成の負荷軽減と情報の取得漏れ防止、さらに多様化・拡大する地域資源の中から最適な支援先を選定できる仕組みを実現するため、音声認識と生成AIを活用した業務支援システムを今回、共同で開発したもの。
「とおかまち健康の処方箋」のリンクワーカー担当者は開発機能について、「面談記録作成や確認の業務を3分の1以下に大幅軽減できる可能性がある」と評価している。そこで、9月から実施する特定保健指導に関わる面談業務では、レポート作成支援機能を試行導入する。
特定保健指導の対象者と保健師との面談から、生活習慣のアセスメントと行動目標の設定の記録を行い、リンクワーカー業務支援システムの利用による業務負荷低減、確認漏れの防止、記録の均一化に関わる評価を行う。
今回の十日町市での試行導入を通じ、リンクワーカー業務支援システムのさらなる機能改善を進めていく。
日立は、Lumada 3.0を実現する一連の技術の一つとして同システムを強化し、専門知識(ドメインナレッジ)とAIを組み合わせた現場業務の高度化を通じて、ウェルビーイングと経済成長を両立するハーモナイズドソサエティの実現に貢献していく。
新潟大学は、地域に密着した研究と実践を通じて、住民一人ひとりの健康課題に寄り添い、地域資源の効果的な活用や社会的処方の実践モデルの構築を推進していく。
今後も両者は連携して、健康・医療・介護・福祉分野への社会的処方の実践・普及を進め、持続可能な未来型健康社会の実現に取り組んでいく。【写真】
「医療機器・化粧品」の記事に関するご意見・お問合せは下記へ。
担当者:河辺
E-mail:kawabe_s@yakuji.co.jp
TEL:03-3866-8499