5月に成立・公布された「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)の一部改正法」が11月20日から順次施行される。
今回の改正法で主要な柱に据えられているのは、▽医薬品等の品質および安全性の確保の強化▽医療用医薬品等の安定供給体制の強化等▽より活発な創薬が行われる環境の整備▽国民への医薬品の適正な提供のための薬局機能の強化等――の4項目である。
つまり、現在の日本において優先度が高い医薬品関連の課題である品質・安全性確保、医療用医薬品の安定供給、ドラッグロス・ラグ解消、薬局機能の強化などに対応することを主眼にしている。数年にわたって現場に困難な状況を強いている医薬品供給不足、その発端ともなった医薬品(特に後発品)の質と安全性の不備、諸外国に比べて患者が新薬の恩恵を受けられないロスと上市遅延のラグ、若年層を中心としたOTC薬乱用多発などが背景にある。
質と安全性の確保では、製造販売業者の「医薬品品質保証責任者」と「医薬品安全管理責任者」設置の法定化、指定医薬品製造販売業者に対する副作用情報収集等に関する計画作成・実施の義務付け、法令違反等発生時に薬事業務責任役員の変更命令などが挙げられている。
安定供給に関しては、医療用医薬品の「供給体制管理責任者」を設置、出荷停止時の届出を義務付け、供給不足時の増産等の協力要請などを法定化した。後発品では、多品目少量生産という産業構造の転換を目指した「後発品製造基盤整備基金」創設が注目される。
創薬環境の整備では、条件付き承認制度を見直して、臨床的有効性が合理的に予測可能である場合等の承認を可能とすることや、医薬品製造販売業者に対する小児用医薬品開発の計画策定を努力義務化することを規定した。さらに、「革新的医薬品等実用化支援基金」を創設し、より活発な創薬実現へ支援する予定だ。
一方、薬局機能の強化としては、薬剤師等の遠隔管理下での一般用医薬品販売や、都道府県知事の許可で薬局調剤業務の一部を外部委託することを可能とすることが規定された。OTC薬乱用対策としては、販売方法を見直して若年者への適正量販売等を義務付けるほか、薬局に求められる基本的な機能を備え、地域住民の主体的な健康維持・増進を積極的に支援する薬局を都道府県知事が「健康増進支援薬局」として認定し公表することも盛り込まれた。
新しい責任者の設置や基金創設など、国民の健康への貢献を目指した各種改善策を法律に記しただけでは動けない。具体的な施行に必要な通知発出や2026年度予算概算要求でも対応している。
改正法施行を前に、改めて新たに規定された内容を熟知した上で必要な行動に移すことが必要であり、全ての関係者に求められることだ。