SMO(治験施設支援機関)とは:治験の質と効率を高める医療機関のパートナー

更新日:2025年12月01日 (月)

 新しい医薬品を患者さんに届けるためには、臨床試験(治験)の円滑で適正な実施が不可欠です。その治験を裏側から支える存在が「SMO(治験施設支援機関)」です。SMOは、医療機関で行われる治験を専門的にサポートする組織であり、治験の現場における業務負担軽減や質の向上に大きく寄与します。本記事では、SMOの基本概念と役割、誕生の経緯、日本における現状、さらに主な業務内容やCROとの違い、治験実施の効率化への貢献、そしてSMOを活用した治験の円滑な進行方法について解説します。

SMOの基本概念と役割

SMOとは何か?

 新しい医薬品を患者さんに届けるためには、臨床試験(治験)の適切な実施が欠かせません。その治験を医療機関の現場で支える存在が、SMO(Site Management Organization、治験施設支援機関)です。SMOとは、治験を実施する病院やクリニックなどの医療機関と契約を結び、治験業務の一部あるいは全部を受託・代行する組織のことです。医療機関に所属する医師や看護師、事務担当者だけでは手が回らない煩雑な手続きや調整業務を専門に担うことで、治験の質とスピードの向上に寄与します。

 SMOの役割と主な業務|日本SMO協会

SMOの誕生の経緯

 SMOが登場した背景には、1990年代後半の治験環境の変化があります。まず1997年に新GCP(「医薬品の臨床試験の実施基準」省令)が導入され1998年に全面施行されると、それまで治験を主に担っていた大学病院など大規模医療機関における治験業務が格段に厳密化・煩雑化しました。1999年には「治験を推進するための検討会報告書」が提出され医療機関の治験業務の一助としてSMOの活用が示唆されました。

 そして2003年(平成15年)7月のGCP省令改正(平成15年厚生労働省令第106号)により、SMOの業務が法令上明文化され、治験施設支援機関として正式に位置付けられました。以降、生活習慣病領域の新薬開発を中心に治験の実施件数が増加する中で、SMOは治験インフラの重要な一翼を担う存在として定着しています。”

日本におけるSMOの状況

 日本ではSMO業界の発展とともに、その体制も整備されてきました。業界団体として2003年に日本SMO協会(JASMO)が設立され、SMO各社の品質向上や情報共有が図られています。現在、JASMOには20社余りのSMO企業が加盟しており、SMO業界全体の9割以上をカバーしています。同協会の調査(2023年実施)によると、加盟企業のSMO事業売上高合計は約475億円、従業員数は約3,827人、そのうち治験コーディネーター(CRC)は約2,891人在籍していると報告されています。SMO企業数は、黎明期の2000年代初頭に100社を超えていましたが、その後は業界再編により集約が進み、現在は大手数社による寡占化が進んでいます。

 治験実施医療機関におけるSMO利用率も年々向上しています。治験の中心であった大学病院のみならず、これまで治験経験の少なかった一般病院やクリニックでもSMOの支援を受けて治験を行うケースが増えてきました。例えば、私立大学病院でSMO支援を受けている施設は、2018年時点で約44.4%でしたが、2023年には53.7%に増加しています。国公立病院でも同期間に22.5%から36.9%へと導入が進みました。特に診療所規模の医療機関ではSMOの関与が不可欠であり、調査では診療所の約97.5%が何らかのSMO支援を受けて治験を実施しているとの結果が出ています。このようにSMOは、日本全国で治験実施体制を支えるインフラとして浸透しており、中小医療機関での治験参入を後押しする存在となっています。

 厚生科学審議会臨床研究部会ヒアリング臨床研究・治験推進に係る今後の方向性および臨床研究中核病院について

SMOの主な業務と機能

治験に関わる機関との関係

 治験は製薬企業(治験依頼者)の主導で行われますが、その実施にあたっては様々な機関が連携して進められます。製薬会社に代わって開発業務を行うCRO(Contract Research Organization、医薬品開発業務受託機関)や、医療機関の治験業務を支援するSMO、そして治験の倫理性や安全性を審査するIRB(治験審査委員会)等が関与しながら治験は進められます。

 SMOは医療機関側と契約関係を結び、医療機関に代わって治験実施に伴う事務手続きや調整業務を担当します。一方、CROは製薬企業から委託を受け、本来製薬企業が行う治験のモニタリング(実施状況の確認)やデータマネジメント、統計解析等の業務を受託します。SMOとCROは委託元が異なるため役割は明確に分かれていますが、円滑で適正な治験を支援するという目標は共通しており、互いに連携しながら治験を支援する関係にあります。”

 SMOは、医療機関と製薬企業をつなぐ橋渡し役としても機能します。通常、治験を実施する際には治験依頼者である製薬企業と実施医療機関との間で契約を結びますが、日本の多くの治験では、SMOが医療機関に代わって契約手続きや費用の調整を行い、製薬企業・医療機関・SMOの三者契約として締結される形式が一般的です。この契約形態では、治験依頼者からSMOへ直接治験支援費用が支払われる仕組みになっており、医療機関にとっては治験に伴う事務処理や金銭授受の負担が軽減されます。さらにSMOは治験事務局の運営補助やIRB対応の支援も担い、医療機関内の関連部門(薬剤部、検査部門等)との調整役も務めます。これにより、医療機関が本来の診療業務を維持しながら治験を進められる環境を整えることができます。

施設調査の流れと契約について

 治験を円滑に開始するためには、治験実施医療機関の選定と契約手続きが重要です。SMOは治験依頼者と医療機関のマッチングにおいて大きな役割を果たします。具体的には、SMOは治験実施計画に適した医療機関を探索・選定するプロセス(施設調査、フィージビリティ調査)を支援します。製薬企業から治験の相談を受けたSMOは、自社の提携医療機関ネットワークの中から適格と思われる候補施設に治験実施の打診を行います。そして各医療機関に対して、担当医師の治験への意向確認や、該当疾患患者の受診状況、必要な設備・人員体制の有無などを調査します。これらの情報をもとにSMOは治験依頼者へ実施候補施設を提案し、依頼者側で実施医療機関の選定が行われます。

 実施医療機関が決定すると、治験開始前に必要な院内手続き(IRBでの治験審査や院内合意形成)と契約締結の段階に移ります。SMOはこの段階でも重要なサポートを提供します。IRB審査資料の準備や、治験実施計画書に基づく必要書類の作成支援、契約書面のドラフト作成など、医療機関の治験事務局業務をSMOが代行します。また、治験担当医師と製薬企業担当者との面会調整や治験実施に関する打ち合わせにも同席し、双方の意思疎通を円滑にする役割を果たします。契約については前述の通りSMOが仲介して三者契約とするケースが多く、契約書の作成・確認作業や医療機関の治験費用算定の支援もSMOが担います。SMOによる包括的な支援により、治験開始前の準備プロセスが効率化され、契約締結までの期間短縮や漏れのない手続きを実現します。

SMOの今後の展望と支援体制

SMOとCROの違い

 前述したように、SMOとCROは治験支援における役割が異なります。改めて整理すると、SMOは医療機関側のパートナーとして、医療機関が行う治験業務の支援(治験事務手続き、被験者対応、データ収集補助など)を担います。一方で、CROは製薬企業側のパートナーとして、製薬企業が本来行う治験関連業務(モニタリング、症例データ管理、統計解析、治験総括報告書の作成など)を受託します。言い換えれば、SMOは「現場(医療機関)の業務」を支援し、CROは「スポンサー(製薬会社)の業務」を支援するという棲み分けです。それぞれの機能は異なりますが、最終的には治験を成功させるために両者とも必要不可欠な存在であり、時には同じプロジェクトで協働することもあります。例えば、複数の医療施設が共同して実施する治験において、CROがモニタリング業務を担当しつつ、各医療機関ではSMOのCRCが被験者対応を担当するといったように、役割分担しながら相互に補完しあう体制が構築されています。SMOとCROの明確な分業体制により、治験依頼者・医療機関双方の負担が軽減され、治験の効率と品質が高められているのです。

治験実施の効率化

 SMOの存在は、治験実施の効率化に大きく貢献しています。まず、人員面では、SMOが専門の治験コーディネーター(CRC)や治験事務局担当者(SMA)を配置することで、医療機関側で専任スタッフを抱えることなく治験業務を回すことが可能になります。このおかげで、医師や看護師は通常の診療に専念しつつ、必要なときにSMOスタッフのサポートを受けて治験を進められるため、医療機関全体の業務負担の平準化が図れます。また、CRCやSMAは治験手続きに精通した専門家であるため、GCPに則った正確な業務遂行と迅速な対応が期待できます。治験実務の経験が豊富なSMOスタッフの関与により、症例データの収集漏れ防止や治験記録の整備状況向上など、治験品質の確保にも寄与します。

 さらに、SMOの支援は被験者に対するケアの充実にもつながります。CRCは治験に参加する被験者との主な窓口となり、同意説明の補助、来院スケジュールの調整、検査や投薬時の付き添いなど、被験者に寄り添った対応を行います。被験者からの相談や不安の声に丁寧に対応することで、被験者が治験に安心して参加できる環境を整え、治験継続率の向上にも貢献します。SMOが各医療機関で治験の窓口業務を受け持つことにより、治験依頼者である製薬企業やCROとのコミュニケーションも円滑になります。問い合わせや調整事項が一本化され、情報共有が迅速に行われるため、問題解決や意思決定のスピードアップにつながります。

 このようにSMOが関与することで、治験の開始から終了までのプロセス全般で効率化が図られています。実際、業界の調査では、SMOが支援した治験において治験期間の短縮効果が見られるとの報告もあります。治験実施施設の拡大という観点でも、SMOの寄与は大きなものがあります。SMOのサポートがなければ治験を担うことが難しかった中小病院・診療所が治験に参加できるようになり、国内の治験症例数やデータ収集力の向上に繋がりました。これは新薬開発のスピードアップにも貢献するものであり、医療現場と製薬企業の双方にメリットをもたらしています。

SMOを活用した治験の円滑な進行方法

 今後の治験環境において、SMOの活用はますます重要になると考えられます。治験を円滑に進行させるためには、医療機関・製薬企業双方がSMOを効果的に活用することが鍵となります。まず、製薬企業にとっては、治験計画段階からSMOの知見を取り入れることが有用です。SMOは多数の医療機関とのネットワークを持ち、各施設の特性や強みを熟知しています。そのため、ターゲット疾患の患者が集まりやすい適切な実施医療機関の選定や、プロトコール設計における現場目線での助言を得ることができます。治験の初期段階からSMOと連携することで、適切な医療機関へのアプローチが可能となり、治験開始までの準備期間を短縮できるでしょう。

 医療機関側にとっても、SMOとの協働体制を早期に整えることが治験成功のポイントです。治験を受け入れる医療機関では、院内に治験担当部署(治験事務局)を設置し、SMOと緊密に情報共有を行うことが望まれます。SMOが提供する標準業務手順書(SOP)の整備支援やスタッフ教育を活用し、事前に院内体制を強化しておけば、いざ治験が始まった際の対応がスムーズになります。また、医師・看護師をはじめ関連部門のスタッフに治験の意義や手順を周知し、SMOスタッフとの役割分担を明確にしておくことも重要です。現場でのコミュニケーションを円滑にすることで、想定外のトラブル発生時にも迅速に対処できるようになります。

 さらに、SMOを活用する上で大切なのは継続的な品質管理と信頼関係の構築です。SMO各社は近年、内部での品質管理体制を強化し、モニタリングや監査への対応力を高めています。しかし過去には、SMO企業のCRCによるデータ改ざんなど不正事例が発覚したこともあり、業界団体の日本SMO協会は自主ガイドラインを策定し再発防止策を徹底してきました。依頼者や医療機関は、SMOに業務をすべて委ねきりにするのではなく、定期的なミーティング等で進捗状況を確認し、信頼関係を醸成することが重要です。情報共有を密にし、問題があれば早期に議論・是正することで、重大な不備の発生を未然に防ぐことができます。SMO側も透明性の高い業務運営を心がけ、依頼者・医療機関から信頼されるパートナーであり続けることが求められます。

 薬事日報 社説「止まらぬ治験不正に歯止めを」(2016年01月15日)

 最後に、SMO業界の今後の展望としては、CROとのさらなる協業やサービスの多角化が挙げられます。近年、大手SMOがCRO企業の傘下に入る動きや、SMO自らCRO業務に参入するケースも見られます。SMO単独ではなくCROと一体となった包括的な治験支援体制を構築することで、治験依頼者にワンストップのサービスを提供できるメリットがあります。また、治験のみならず臨床研究(医師主導治験や観察研究)の支援ニーズも高まっており、SMO各社はそうした領域にもサービスを拡大しつつあります。さらに、IT技術の活用による治験の効率化(いわゆる「治験のe化」)への対応も進んでおり、SMOは時代のニーズに合わせて柔軟に進化し続けることが期待されています。今後もSMOは、医療機関と製薬企業を結ぶパートナーとして、そして治験の円滑な遂行を支える専門家集団として、その役割と重要性を増していくでしょう。

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