医療法等の一部を改正する法律案が4日の参議院厚生労働委員会で賛成多数で可決された。この改正法は26本の法律(数え方にもよる)が絡んでいるが、参議院での審議時間は11時間数分。
法案に反対したのは日本共産党の白川容子委員とれいわ新撰組の天畠大輔委員。両委員は採決に当たってそれぞれ次のような「反対討論」を行った。「賛成討論」はなかったが、法律案の提案自体が「賛成」の立場であるので、ここでは反対意見を掲載してみた。
<白川委員>
○衆議院の修正では、経営安定として、病床削減を支援し、連動して基準病床数を削るとされている。医療機関経営が極めて悪化するもとで、経済的インセンティブを示せば、地域に必要な病床まで削減される可能性が否定できず、基準病床数の削減は、必要な病院開設、増床を困難にする。
○新たな地域医療構想は、社会保険料の病床を抑制する仕組み、すなわち医療介護費抑制政策の一つとして位置づけられている。患者負担増や医療機関の経営危機、介護外しや利用者負担増などを招いた医療介護費抑制政策の見直しこそ必要。
○法案は、医療DXを促進するために、電子カルテ情報等を含む国保有の各種データベースを連結させ、仮名加工情報として民間事業者等が2次利用できるとしている。自己情報コントロール権の保障こそ必要であり、現行法の不十分なプライバシー保護を置き去りにしたまま、利用情報や提供先を拡大することは認められない。
○2030年末までに電子カルテを約100%に普及することが政府に義務付けられているが、医療現場に新たな負担を持ち込み、地域の診療所を閉院に追い込むことになりかねない。
○法案は、医師偏在対策を進めるが、医師不足を放置したままでは根本的な解決にはならない。過労死水準の残業容認など、医師の長時間過密労働の是正、そのためにも医師養成数の大幅増が必要。
○オンライン診療の法制化では、オンライン診療の受診施設を法律に位置付けて、営利企業の参入を認めているが、営利企業がオンライン診療を主導する現状の規制こそ必要。対面診療と並ぶ診療形態と位置付けて拡大するのではなく、対面診療を原則とし、オンライン診療はあくまで補完とすべきである。
<天畠委員>
○(前略)内閣提出の原案は、この法律の名前、医療法とは名ばかりで、実際には医療崩壊法として全国各地で医療資源の縮減のエンジン役となっていることに対する反省と方向転換が全く盛り込まれていない。この一点だけでもはや評価に値しない。
○(衆議院修正案に対して)反対理由の第1は、都道府県が医療計画において、基準病床数をさらに削減する旨明記されている点。そもそも現行の基準病床数は、病床過剰地域から非過剰地域へ誘導することを通じて、病床の地域的偏在を是正し、全国的に一定水準以上の医療を確保することが目的とされている。であるならば、削減のみならず、必要に応じて拡充する方向性もセットで明記しなければ、初めに削減ありきそのものだ。結局、基準病床数とは名ばかりで、病床削減を進めるための圧力として利用されており、今回の修正でもそれがさらに強化されていることが明らかになった。
○反対理由の第2は、2030年12月31日までに、電子カルテの普及率100%を達成するとしている点。日本医師会は導入義務化に断固反対と言っている。今年4月から5月におこなった調査では、過半数の診療所が導入不可能と回答している。費用負担が重く、操作が複雑で、診療時間が削られるためである。政府には医療DXを遂行する意思も能力もない。マイナ保険証導入を巡る迷走ぶりを見てくれ。多くの人々の納得を獲得しながら、丁寧に物事を進めることができない。
<医療法等の一部改正法に関係する法律>
〔1〕医療法〔2〕地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律〔3〕健康保険法〔4〕船員保険法〔5〕国民健康保険法〔6〕高齢者の医療の確保に関する法律〔7〕介護保険法〔8〕良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律〔9〕児童福祉法〔10〕予防接種法〔11〕母子保健法〔12〕原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律〔13〕感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律〔14〕健康増進法〔15〕障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律〔16〕石綿による健康被害の救済に関する法律〔17〕水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法〔18〕特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法〔19〕がん登録等の推進に関する法律〔20〕難病の患者に対する医療等に関する法律〔21〕医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報及び仮名加工医療情報に関する法律〔22〕社会保険診療報酬支払基金法〔23〕地方自治法〔24〕電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律〔25〕新型インフルエンザ等対策特別措置法〔26〕行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律。
医療法等の一部を改正する法律案資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/topics/bukyoku/soumu/houritu/217.html
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