問いから始めるRWEの新たな価値
増え続ける医療データを、意思決定につながるエビデンスへ
RWE活用が求められる時代へ
医薬品開発を取り巻く環境が大きく変化する中、リアルワールドエビデンス(RWE)の重要性が高まっています。従来、医薬品の有効性や安全性を評価する中心的な手法はランダム化比較試験(RCT)でしたが、実臨床で得られる多様なデータを活用することで、臨床試験だけでは捉えきれない患者像や治療実態、アンメットメディカルニーズを明らかにしようとする取り組みが広がっています。
RWEとは、医療現場や日常生活の中で得られるリアルワールドデータ(RWD)をもとに創出されるエビデンスを指します。電子カルテ、保険請求データ、疾患レジストリ、患者報告アウトカム(PRO)など、活用可能なデータソースは年々多様化しています。
特に日本では、利用可能な医療データベースの選択肢が増え続けており、研究目的や疾患領域に応じて、どのデータをどのように活用するかが、これまで以上に重要なテーマとなっています。
さらに、最も有用なエビデンスは必ずしも単一のデータソースから得られるとは限りません。保険請求データ、電子カルテ、疾患レジストリ、さらには異なる医療環境や国・地域のデータを、共通の研究課題に沿って設計・解釈することで、より多面的な知見につながる場合もあります。
データが増えたからこそ生まれた新たな課題
一方で、データが豊富に存在すること自体が価値を生むわけではありません。重要なのは、最初に「何を明らかにしたいのか」という研究課題を明確にし、その問いに対して適切なデータソース、研究デザイン、解析手法を選択することです。
利用可能なデータが増えるほど、分析対象を広げ過ぎてしまい、結果として明確な示唆や意思決定につながるエビデンスを得られないケースも少なくありません。製薬企業に求められているのは、単にデータへアクセスすることではなく、臨床的・科学的・事業的価値を持つエビデンスへと昇華させることです。
近年では新しいデータソースやデータプロバイダーも次々と登場しています。例えば、保険請求データは大規模な患者集団や長期的な治療パターンの把握に適している一方、電子カルテは検査値や疾患重症度など、より詳細な臨床情報を提供できる場合があります。また、日本のデータによって国内の医療環境を把握しつつ、海外のデータを参照することで、観察された傾向が日本特有のものなのか、他の医療システムでも共通してみられるものなのかを検討できる場合もあります。
それぞれのデータソースには強みや限界があり、研究目的に応じて適切に活用することが重要です。
必ずしも患者レベルでデータを連結する必要はありません。共通の研究課題やアウトカムに沿って複数の解析を設計し、それらを総合的に解釈することで、単一のデータソースだけでは得られない、より臨床的に意味のある示唆につながることがあります。
「問い」から始めるエビデンス創出
サイネオス・ヘルスでは、このような環境の変化に対応するため、特定のデータソースや解析手法を前提とするのではなく、顧客が解決したい臨床上の課題や研究目的を起点に、複数の選択肢を比較検討しながら最適なエビデンス創出戦略を設計するアプローチを重視しています。
顧客から特定のデータベースを用いた研究依頼を受けた場合でも、そのデータベースが研究目的に適しているのかを客観的に検討し、必要に応じて代替データソースや複数のデータベースを組み合わせた選択肢を提示します。
研究目的や最終的に発信したいメッセージを起点に研究計画を設計し、論文化や学会発表までを見据えながら進めていく点も特徴の一つです。
サイネオス・ヘルスのAPAC RWEアソシエイトディレクターのラッセル・ミラー氏は次のように語ります。
「私たちはデータベースから出発するのではなく、まず顧客が解決したい臨床上の問いから考えます。その問いに対して最適なデータソースや研究手法を検討し、場合によっては保険請求データ、電子カルテ、異なる医療環境や国・地域のデータから得られる知見を組み合わせながら、より意味のあるエビデンス創出へとつなげていきます。」
研究目的によって最適解は異なる
このアプローチは、特定のデータベースやソリューションに依存しない柔軟性をもたらします。
症例数を重視するのか、より詳細な臨床情報を必要とするのか、あるいは医療経済評価やHTA対応を目的とするのかによって、最適なデータソースや研究デザインは異なります。
重要なのは、利用可能なデータの中から一つを選ぶことではなく、研究課題に最も適したアプローチを設計することです。サイネオス・ヘルスでは、それぞれの選択肢の強みと限界を整理しながら、顧客とともに最適な研究の方向性を検討しています。
また、RWEでは各国の医療制度や診療実態、データベース構造、研究文化の違いが、研究設計や結果の解釈に大きく影響します。日本の大学院でRWEを専攻し、サイネオス・ヘルス・ジャパンで7年にわたりRWE領域に携わってきたミラー氏は、グローバルなRWEの知見と日本の医療環境への理解を組み合わせることが、日本市場に適したエビデンス戦略の構築につながると指摘しています。
臨床開発から価値実証までを支えるRWE
RWEの役割は上市後のデータ解析にとどまりません。
開発初期における試験実施可能性の評価や患者集団の把握、上市前後の医療経済評価、HTA対応、さらには上市後の価値実証まで、その活用領域は医薬品ライフサイクル全体へと広がっています。
RWEは、臨床開発、メディカルアフェアーズ、そして製品価値の評価・実証をつなぐ重要な基盤として位置付けられています。
特にメディカルアフェアーズにおいては、製品が市場に出た後も、実臨床でどのような価値を生み出しているのかを継続的に示すことが求められます。日本の患者さんや医療環境に即した新たな知見を創出し、論文化や学会発表を通じて発信することで、医療従事者、支払者、規制当局など多様なステークホルダーとの対話を支えることができます。
サイネオス・ヘルス・ジャパン クリニカルディベロップメント ジェネラルマネージャーの城山慶介氏は次のように述べています。
「サイネオス・ヘルスの強みは、臨床開発支援だけでなく、RWEを通じたエビデンス創出まで支援できることです。さらに、製品価値の実証を支援する機能とも連携しながら、開発から上市後までを見据えた包括的なソリューションを提供しています。」
RWEに求められる本質とは
データソースが増え続ける現在、RWEの価値は「どのデータを持っているか」ではなく、「どの問いに答えられるか」へと移りつつあります。
どの患者集団に、どのような未充足ニーズがあり、どのような治療実態やアウトカムを明らかにすべきなのか。その問いを起点に適切なデータと手法を選択し、臨床開発から製品価値の実証までを支えるエビデンスを創出することこそが、これからのRWEに求められる役割といえるでしょう。
RWEは、単なるデータ活用の手法ではなく、医薬品開発や製品価値の創出における意思決定を支える重要な基盤として、今後さらにその重要性を高めていくと考えられます。
サイネオス・ヘルスについて
サイネオス・ヘルス(R)は、バイオ医薬品企業の成功を加速する統合型ソリューション企業です。臨床開発、メディカルアフェアーズ、コマーシャル領域で培った独自のインサイトを活かし、絶えず変化する市場環境の中で最適な成果を生み出しています。
当社では、世界中の専門家が、患者・医師の行動や市場動向を深く理解し、多様な知見を持ち寄っています。最新のテクノロジーと高度なビジネス手法を組み合わせ、重要な治療法をより早く患者のもとへ届ける取り組みを進めています。
誠実でインクルーシブ、そして高いパフォーマンスを重んじる企業文化を原動力とし、社員・お客様・患者・地域社会・地球環境に寄り添う組織づくりを推進しています。
当社のエキスパート達がお客様の成功をどのように後押しできるか、詳しくは syneoshealth.comをご覧ください。



















