【2026年度改定】在宅薬学総合体制加算(加算1:30点、加算2:個人宅100点・施設50点):個人宅重視で薬局に求められる対応

更新日:2026年03月12日 (木)

高齢化の進行に伴う在宅医療ニーズの増加を背景に、薬局に求められる在宅医療の役割は一段と大きくなっている。2026年度調剤報酬改定では、その流れを反映する形で「在宅薬学総合体制加算」が見直され、薬局の在宅対応をどう評価するかが改めて整理された。今回の改定で特に注目すべきなのは、個人宅への対応をより重く評価する方向が明確になった点だ。

在宅薬学総合体制加算は、在宅患者訪問薬剤管理指導のような個別業務の評価とは異なり、薬局が在宅医療を支えるための体制を整えているかを評価する加算である。2024年度改定で加算1と加算2が新設され、2026年度改定ではその評価の重点が見直された。個別改定項目でも「Ⅱ-5-1 地域において重症患者の訪問診療や在宅看取り等を積極的に担う医療機関・薬局の評価」の中に「⑫ 在宅薬学総合体制加算の見直し」が位置づけられている。

2024年04月01日 8面・9面
【調剤報酬・薬価改定のポイント】薬局の医薬品供給体制を評価‐厚労省 安川 孝志薬剤管理官に聞く

在宅薬学総合体制加算とは何か

在宅薬学総合体制加算は、薬局が在宅患者に継続的に対応するための体制を持っているかを評価する仕組みだ。夜間・休日を含む対応、医療用麻薬の取り扱い、無菌製剤処理への備え、小児在宅やターミナル期への対応など、在宅医療で必要となる機能をどの程度備えているかが制度上の焦点となってきた。

2024年度改定では、従来の在宅患者調剤加算に代わって在宅薬学総合体制加算1(15点)と同2(50点)が新設された。加算2は、癌末期などターミナルケア患者への対応体制として、医療用麻薬の備蓄・取り扱いや、無菌室、クリーンベンチまたは安全キャビネットの整備などが要件とされ、厚生労働省は2024年5月の疑義解釈で、他薬局の設備を共同利用するだけでは要件を満たさないとの見解も示していた。

一方で、制度開始後の実態を見ると、体制整備と実績が必ずしも一致していないことが明らかになった。2025年11月の中医協総会では、在宅薬学総合体制加算2を届け出て無菌調剤設備のある薬局のうち、1年間で無菌製剤処理加算の算定がない薬局が約3分の2を占める実態が示されている。

2024年04月03日 2面
【厚生労働省】地域に情報周知で具体例‐24年度改定の疑義解釈
2024年05月15日 2面
【厚生労働省】無菌室共同利用は不可‐在宅薬学総合体制加算2
2025年11月17日 2面
【中医協総会】在宅体制加算基準見直しを‐無菌処理の実績少なく

2026年度改定で何が変わったのか

2026年度改定では、在宅薬学総合体制加算1が現行の15点から30点へ引き上げられた。さらに、ターミナル期や小児在宅患者に対応した薬局を評価する同加算2については、イ(個人宅)を100点とし現行の2倍に増点する一方、ロ(施設)は50点に据え置かれた。つまり、個人宅と施設在宅の評価が明確に差別化されたのである。

この見直しは、単なる増点ではない。2026年度改定は、在宅を「やっている」と言える体制を広く評価するだけでなく、個人宅への対応実績をより重視する方向性が今回の見直しで明確になった。厚労省は、在宅を施設中心で行う薬局が効率化に偏らないよう、個人宅の実績に一定割合を求めたとしている。

厚生労働省保険局医療課の清原宏眞薬剤管理官は、この見直しについて「個人宅の在宅を手厚くしなければならないと考え、在宅を施設専門で行う薬局が効率化に走らないよう、個人宅の実績に一定割合を求めた。さらに無菌調剤設備の基準を撤廃し、実績ベースに見直した」と説明している。2026年度改定の方向性を端的に示すコメントと言える。

2026年02月16日 1面
【診療報酬改定案を答申】薬剤レビューに1000点設定‐DgSとチェーン薬局で明暗
2026年01月28日 1面
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なぜ「個人宅重視」「実績重視」に変わったのか

背景にあったのは、2025年を通じて中医協で続いた「ストラクチャー評価」と「実績評価」をめぐる議論だ。設備整備のみを評価することの是非をめぐり、実績をより重視すべきではないかとの議論が強まっていた。

健康保険組合連合会理事の松本真人委員は、「加算の施設基準に無菌設備を位置づける必要性は乏しい」と主張した。全国自治体病院協議会副会長の小阪真二委員も、「クリーンベンチを買ったが使っていない薬局が84.6%というのは、ストラクチャー評価をしても無駄な報酬を呼び込む。無菌製剤処理加算の届出薬局数は増えていても算定薬局数は増えていないので、ストラクチャーで評価するのか、プロセスで評価するのかを考える必要がある」と述べている。

これに対し、日本薬剤師会副会長の森昌平委員は、「無菌製剤処理加算を算定している薬局数が伸びていないのは、無菌製剤の体制を整備していても対象患者が少ないために調剤の機会が少ないのが原因」と反論した。また、2025年8月の中医協総会では、森氏は「医療提供体制の課題は地域で異なり、各薬局の努力だけではなく薬局間連携による体制を面で支えていくことが必要」とも述べている。つまり、単純に設備要件を否定するだけでなく、地域連携の中でどう機能を支えるかが論点になっていた。

2026年度改定は、こうした議論を踏まえ、設備の有無そのものよりも、どのような患者に、どの程度、実際に対応しているかをより重視する整理に踏み出したといえる。とりわけ個人宅への対応実績に一定割合を求めた点は、在宅を施設偏重で進めるのではなく、より負荷の高い在宅患者への対応を促す制度設計である。

2025年11月17日 2面
【中医協総会】在宅体制加算基準見直しを‐無菌処理の実績少なく
2025年08月29日 2面
【中医協総会】在宅体制加算4割が算定‐評価メリハリ求める声
2026年01月28日 1面
「地域医療担う薬局守る」‐厚労省 清原薬剤管理官、調剤報酬改定案に言及

薬局実務と経営への影響

薬局実務の観点では、2026年度改定後の在宅薬学総合体制加算は「届出を出せるかどうか」だけではなく、個人宅への対応実績など実績面がこれまで以上に重視される加算になった。特に、個人宅の実績をどう積み上げるかが、今後の評価に直結するテーマになる。

個人宅への対応では、急変時の開局時間外対応、医療用麻薬への対応、小児在宅やターミナル期患者への関与、多職種連携などが求められる。2026年度改定では、こうした機能をどの程度担っているかが、これまで以上に重要になる。

さらに、地域の中で役割を分担する視点も重要になる。2025年の議論では、訪問薬剤管理指導の地域差や24時間対応可能な薬局数の偏在も問題になっていた。個々の薬局が全てを抱え込むのではなく、地域でどの薬局が麻薬対応や無菌調剤、小児在宅、夜間対応を担うのかを調整しながら、面で在宅を支える発想が求められる。

2026年01月28日 1面
「地域医療担う薬局守る」‐厚労省 清原薬剤管理官、調剤報酬改定案に言及
2025年09月26日 1面
在宅医療でも地域差が課題‐第8次計画見直しで初会合

今後の論点―附帯意見で示された継続検討事項

2026年度改定で方向性が示されたとはいえ、制度見直しはこれで終わりではない。2026年度改定の附帯意見案では、薬局の都市部偏在に関する調査・検証とともに、地域支援体制加算・在宅薬学総合体制加算における実績要件や人員要件のあり方、都市部における小規模乱立を解消するための評価、医療資源の少ない地域に配慮した評価のあり方を引き続き検討すると明記された。

つまり、2026年度改定後も、在宅薬学総合体制加算の実績要件や人員要件のあり方などは引き続き検討されることになる。今後は、在宅薬学総合体制加算を算定する薬局が本当に在宅患者を支える機能を発揮しているのか、個人宅重視の評価がどのような影響をもたらしたのか、地域差への配慮は十分か、といった点が改めて検証される可能性が高い。

2026年01月30日 2面
地方薬局の要件緩和検討‐26年度改定附帯意見案

まとめ

在宅薬学総合体制加算の2026年度改定は、加算1の引き上げ、加算2における個人宅100点・施設50点への整理に象徴されるように、個人宅をより重く評価する方向を鮮明にした。背景には、無菌設備などの体制要件だけでは実態を十分に評価できないとの問題意識があり、制度は「持っている体制」から「実際に果たしている機能」へと評価の軸を移しつつある。

2026年02月16日 1面
【診療報酬改定案を答申】薬剤レビューに1000点設定‐DgSとチェーン薬局で明暗

在宅患者の増加が続く中、薬局に求められるのは、届出の形式を整えることではなく、個人宅を含む多様な患者に継続的に対応できる実践力である。2026年度改定は、その方向性をより明確に示した改定と言える。

2026年01月28日 1面
「地域医療担う薬局守る」‐厚労省 清原薬剤管理官、調剤報酬改定案に言及



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