
菊池氏
オラクルは、既存の安全性業務アプリケーションでAI活用を進めると共に、リアルワールドデータ(RWD)やAIを活用した安全性評価の高度化に取り組んでいる。長年にわたり提供してきたSafety One ArgusやEmpiricaなどで培った知見を基盤に、シグナル検出後の評価や検証を支援し、専門家がより迅速に、多くの根拠に基づいて判断できる環境の実現を目指す。
副作用データベースを用いたシグナル検出は、仮説を見つけ、優先順位を付ける上で重要な役割を担う。ただ、得られるのは報告件数や報告割合に基づく指標であり、直ちに因果関係の確認につながるわけではない。評価に当たっては、関連症例や類似薬、文献、海外規制当局の対応など、様々な根拠を総合的に検討する必要がある。
RWDは、自発報告だけでは把握しにくい実臨床での発現状況や患者背景を補い、有害事象(AE)の発生状況や時間的傾向、特定の患者群への集中などの検討に役立つ。シグナルを患者レベルの臨床的な文脈で理解する上でも、有用な手段となり得る。オラクルは北米を中心に1億人を超える匿名化された患者の電子カルテデータを保有しており、安全性評価の領域での活用に向けた取り組みを進めている。
Safety One Argusでは、すでに生成AIやVision AIなどを活用した機能を提供している。Intake領域では、AIを活用して構造化文書や非構造テキストからAE情報を抽出し、担当者が内容を確認・修正できる仕組みを備える。2026年3月にリリースした最新版では、複数のAIエージェントを活用し、文脈や否定表現、情報間の関係を踏まえた症例情報の抽出や、文書の画像とテキストを組み合わせた解析機能を強化した。
また、安全性評価の領域では、AIエージェントがRWDを含む多様な情報の収集、整理、解析を支援し、担当者が判断に必要な材料をより迅速に把握できるようにする。ただし、AIは安全性判断を担うのではなく、専門家の判断を支援する。そのため、使用したデータや分析手順、得られた結果の根拠を追跡でき、人が必要に応じて確認、修正、再実行、承認できることが重要になる。同社は、こうした説明可能性と監査可能性を設計の前提に据えている。
現在は、シグナル検出後のトリアージや初期評価の迅速化に加え、RWDを含む様々なデータの抽出、文献確認、統計解析、可視化など、一連の分析業務をAIエージェントが支援するユースケースの有用性をPOCで検証している。将来的には、こうした個別の活用を段階的につなぎ、症例評価、シグナル管理、RWD解析、リスク管理をより緊密に連携させ、専門家の判断を継続的に支える安全性管理の仕組みへの発展を目指す。
菊池亜実ソリューション・コンサルタント(プリンシパル)は、「市販後の安全性管理に求められるのは、単なる業務効率化ではない。最終的な目的は、医薬品を使用する患者を守り、ベネフィットとリスクをより適切に評価し、必要な安全対策を、より早く、より確かな根拠に基づいて講じることにある。これまで培ってきたPVの基盤にRWD、AI、クラウドを組み合わせ、患者の安全をより能動的に支える『Proactive Safety Intelligence』の実現に貢献していきたい」と話す。
オラクル(Safety One Platform)
https://www.oracle.com/jp/life-sciences/pharmacovigilance/




























