OTC医薬品との代替性が特に高い医療用医薬品、いわゆる「OTC類似薬」について、薬剤費の一部を保険給付の対象外とする「一部保険外療養」の実施案が9月16日にまとまりました。制度が始まると、対象となる薬の薬剤費の4分の1が保険給付の対象外となり、その分を患者が通常の自己負担とは別に支払うことになります。2027年3月施行予定の制度で何が変わり、医療現場や薬局、OTC医薬品の需要にどのような影響が出るのでしょうか。ニュースに興味を持った新人記者のおかっちが、先輩のK山記者のもとを訪れました。
患者負担はどう変わる
おかっち OTC類似薬の「一部保険外療養」の実施案がまとまったとのことですが、どこで何が決まったのでしょうか。
K山 9月16日の社会保障審議会医療保険部会で、制度の実施案がまとまった。OTC医薬品との代替性が特に高い医療用医薬品について、通常の自己負担に加え、薬剤費の4分の1を患者が別に支払う仕組みだ。2027年3月から始まる予定なんだ。
おかっち そもそも、OTC類似薬とはどのような薬ですか。
K山 明確な定義はないが、一般的に薬局やドラッグストアで買えるOTC医薬品と、同じか似た成分を含む医療用医薬品のことをOTC類似薬と称している。今回の制度では、OTC医薬品と有効成分や投与経路が同じで、1日最大用量も変わらない医療用医薬品のうち、77成分、1042品目が対象になったんだ。
おかっち 具体的には、どのような薬が含まれますか。
K山 鼻炎、胃痛や胸やけ、便秘、解熱・鎮痛、風邪症状、腰痛や肩こり、水虫、口内炎、皮膚のかゆみや乾燥などに使う薬だ。成分名では、ロキソプロフェンナトリウム水和物、イブプロフェン、フェキソフェナジン塩酸塩、ロラタジン、ヘパリン類似物質、L-カルボシステインなどで、該当する製品名を例示すると、解熱鎮痛薬「ロキソニン」、抗アレルギー薬「アレグラ」「アレジオン」、去痰薬「ムコダイン」、便秘・制酸薬「マグミット」、皮膚保湿剤「ヒルドイド」、皮膚疾患治療薬「リンデロン-V」などだね。
おかっち 患者が支払う薬代は、どのくらい増えるのでしょうか。
K山 例えば3割負担の患者なら、薬剤費の25%をまず保険外とし、残る75%に通常の3割負担を適用する。単純計算では、対象薬の薬剤費に対する患者負担は47.5%になるんだ。3割負担に25%を足して、55%を支払うわけではないよ。
今回の制度で保険外になるのは対象薬の薬剤費の4分の1だけで、対象薬そのものを全面的に保険から外す制度ではないし、残りの薬剤費や診察、調剤には引き続き保険が使われる。
追加負担がかからない場合も
おかっち 対象になっている薬を処方されたら、誰でも薬代が高くなるということですか。
K山 何の治療に使うかによっては、追加負担の対象外になる。例えばフェキソフェナジン塩酸塩は、OTC医薬品では主に鼻のアレルギー症状に使う一方、医療用医薬品では蕁麻疹や皮膚のかゆみにも使われる。OTC医薬品の効能・効果では対応できない病気や症状の治療に使う場合は、追加負担がかからないんだ。
おかっち ほかにも、追加負担がかからない場合はあるのですか。
K山 こどもや入院患者には追加負担を求めない。がんや指定難病、公費負担医療では、対象となる病気や、それに関連する治療で対象薬を使う場合に、追加負担の対象外となる。
おかっち 同じ薬を長く使う必要がある人では制度の影響が大きそうですが、どうなるのでしょうか。
K山 1年を通して使い続ける必要があると医師が判断した場合は、追加負担がかからない。判断の目安は年間おおむね50週の使用だが、実際に50週使っていることが必須というわけではない。少なくとも6カ月程度の使用実績を確認した上で、今後も通年で使う必要があるかを医師が判断するんだ。
アトピー性皮膚炎では、症状が落ち着いた後も、再燃を防ぐためにステロイド外用薬などを計画的に使うプロアクティブ療法がある。年間を通じた医学的必要性が確認されれば、こうした使い方も対象外になり得るんだ。
対象判断は医師、会計は薬局
おかっち 薬局では、追加負担が必要かどうかを、どのように確認するのでしょうか。
K山 処方箋に「一部保険外療養」の欄を設け、対象となる薬を処方する場合、追加負担の対象なら「○」、対象外なら「-」を医療機関側が記載する。処方医が判断し、薬局はその表示を確認して追加負担の有無を会計に反映する仕組みだ。
おかっち 薬局の薬剤師が、病気や長期使用の必要性を一から判断するわけではないのですね。
K山 そういうことだ。対象か対象外かを判断するのは処方医で、薬局は処方箋に沿って会計する。ただ、必要な記載がないなど、処方箋だけでは追加負担の対象かどうかを確認できない場合には、薬局から医療機関への確認が必要になる可能性があるだろうね。
おかっち 制度が始まると、医療機関や薬局の業務負担はどうなりますか。
K山 医療機関は追加負担の対象か対象外かを判断して処方箋に示す必要があるし、薬局は追加負担の有無を会計に反映しなければならない。薬局では、医療機関への確認が必要になる場合があるほか、窓口で患者に追加負担の仕組みを説明する場面が増える可能性もあるよ。
1年以上かけ制度を具体化
おかっち この制度は、どのような流れで具体化したのでしょうか。
K山 2025年6月の政党間合意と「経済財政運営と改革の基本方針2025」で、OTC類似薬の保険給付を見直す方針が示された。同年12月には、社会保障審議会医療保険部会で、77成分を対象に薬剤費の4分の1を別途負担とする制度の骨格が整理されたんだ。
おかっち その段階で、制度の導入が決まったのですか。
K山 法律上の枠組みができたのは、2026年5月29日に健康保険法等の改正法が成立し、6月5日に公布されてからだ。この改正で、療養にかかる費用の一部を保険給付の対象外とする「一部保険外療養」が設けられ、2027年3月から施行することになったんだ。
おかっち その後、検討が続いたのでしょうか。
K山 そうなんだ。法律で決まったのは制度の大枠で、追加負担を求めない対象や、その具体的な判断基準については、さらに詰める必要があった。厚生労働省は、医学・薬学などの有識者で構成する「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会」を設け、同じ成分でも医療用医薬品とOTC医薬品で認められた効能・効果が異なる場合をどう扱うか、どのような患者や療養を追加負担の対象外とするかなどを議論した。がんや指定難病、公費負担医療の対象者、入院患者などへの配慮も大きな論点になったんだ。
おかっち ほかにも議論すべきことがあったのでしょうか。
K山 その後の社会保障審議会医療保険部会では、がん、難病、アレルギー疾患などの患者団体の代表も議論に参加した。年間処方日数だけで長期使用を判断しないことや、アトピー性皮膚炎のプロアクティブ療法、指定難病患者の確認方法などについて意見が出され、追加負担の対象外となる範囲が具体化したんだ。
中央社会保険医療協議会では、制度を医療現場でどう運用するかが議論された。処方医の判断を薬局に伝えるための処方箋の記載方法や、費用の計算方法などの実務面が検討され、こうした一連の議論を経て概要が固まったんだ。
背景にある医療費の適正化
おかっち そもそも、なぜOTC類似薬の薬剤費の一部を保険給付の対象外とする制度が必要なのでしょうか。
K山 医療保険制度を将来にわたって維持するためにも、増え続ける医療費をどう抑えるかは、以前から国の大きな課題になっている。その一環で今回の制度が設計されたんだ。
同じような症状でも、医療用医薬品の処方を受ければ保険料や公費が使われる一方、OTC医薬品を買う人は全額を自分で支払う。国は、この違いを見直し、医療保険から支払う費用を抑える観点から、対象薬の薬剤費の一部を患者に負担してもらい、現役世代を中心とする保険料負担の上昇を抑えたいと説明しているんだ。
もっとも、類似のOTC医薬品が市場にあるなら、そっちを使ってもらって、保険給付をできるだけ抑えたいというのが本音だろう。
おかっち 最初から、現在の制度案だったのですか。
K山 OTC類似薬を保険給付から外す考え方もあったが、患者負担の増加や必要な受診への影響を懸念する意見が示された。そこで、対象薬そのものを保険給付から外すのではなく、医療用医薬品としての処方・調剤を維持しながら、薬剤費の一部について別途負担を求める現在の仕組みにまとまったんだ。
おかっち OTC類似薬の見直しは、今回、急に始まった議論なのでしょうか。
K山 いや、以前から医療費の適正化という観点で、個別の薬ごとに見直しが行われてきた。代表的なのが湿布薬だ。患者が医療機関で湿布薬を一度に大量に処方してもらい、使い切れずに残したり、家族や知人に渡したりすることが問題として指摘されていた。こうした問題を背景に、2016年度の診療報酬改定で、外来患者に対する数量制限が設けられ、原則として超過分を保険給付の対象にしない仕組みが導入された。
おかっち これまでの適正使用の取り組みだけではなく、患者負担の仕組みそのものを変える点が新しいのですね。
K山 その理解でいい。ビタミン剤、うがい薬、湿布薬では、治療上の必要性や処方量に着目して、保険給付や診療報酬上の算定範囲がそれぞれ見直されてきた。個別品目への対策から、より広い制度としての給付見直しに踏み込んだと見ることができるんだ。
OTC購入は増えるのか
おかっち この制度で、どの程度の医療費削減効果が見込まれるのでしょうか。
K山 2025年12月の自由民主党と日本維新の会の政調会長合意時に、医療用医薬品77成分約1100品目のOTC類似薬を対象に薬剤費の4分の1を保険外負担として求めた場合、受診行動の変化も踏まえて、約900億円の医療費削減効果を見込むと報じられた。概算値として頭に入れておきたい。
おかっち この制度によってOTC医薬品を買う人は増えるのでしょうか。
K山 今までに比べて薬剤費の自己負担が増えることで、OTC医薬品の購入に切り替える人が増える可能性はある。ただ、今回対象となったOTC類似薬は、薬価の低いものが多く、負担が増えたとしても、OTC医薬品の購入に移行するほどの大きなインセンティブにはなり得ないとの見方もあるね。
おかっち 今後、制度の検証は予定されているのでしょうか。
K山 社会保障審議会医療保険部会の実施案では、制度が患者の受療行動に与える影響を把握・分析するとしている。具体的には、受療行動への影響や処方シフトに加え、医療機関や医師による判断のばらつきが生じていないかなどが、検証課題になると考えられる。
おかっち その結果によっては、将来、対象成分や負担割合が広がる可能性もありますか。
K山 施行後の状況を把握・分析した上で、必要な見直しを行う考え方は示されている。2025年12月の政調会長間合意では、2027年度以降に対象範囲の拡大や負担割合の引き上げを検討するとされているね。
おかっち 製薬企業の立場からは、一連の動きをどう捉えるべきでしょうか。
K山 同一成分の医療用医薬品とOTC医薬品を取り揃えている製薬企業は少なくない。制度によるOTC類似薬の売上減と、OTC医薬品の売上増が企業経営にどう影響するかによって、製薬企業の見解や立場も異なるだろう。
おかっち スイッチOTCへの影響は考えられますか。
K山 医療用医薬品を転用したスイッチOTCを発売することで、同一成分の医療用医薬品がOTC類似薬と認定されて売上が減少し、企業全体の収益が低下してしまうのであれば、スイッチOTCの発売に慎重になる製薬企業もあるかもしれないね。一方、制度をきっかけにOTC医薬品の需要が大きく伸びれば、新たな市場機会にもなる。医療用医薬品の売上減をOTC医薬品の売上増で補えるのかによって、企業ごとの判断は分かれるだろうね。
将来的に制度がどこまで広がるかによって、影響の大きさも変わってくる。まずは、制度開始後の患者の動きがどうなるかを見ておきたいね。
【参考情報】
・厚生労働省 第216回社会保障審議会医療保険部会「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について」(2026年9月16日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001750154.pdf
・厚生労働省 中央社会保険医療協議会「一部保険外療養の創設に伴う療養担当規則等の所要の見直しについて」(2026年9月16日)
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001750142.pdf
・厚生労働省 OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた中間とりまとめ」(2026年8月6日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12403550/001734914.pdf
・厚生労働省「第4回OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会 別途の負担の対象となる医療用医薬品の品目の一覧(案)」(2026年8月5日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12403550/001733705.pdf






















