
小川社長
ロシュ・ダイアグノスティックス(RDKK)は2010年度に、抗EGFR抗体の効果を判別するK‐RAS遺伝子変異検出キットを投入し、癌領域で個別化医療(PHC)を推進する。4月の保険収載後に上市する予定で、成長が鈍化している体外診断薬分野の底上げを目指す。4日に都内で記者会見した小川渉社長は、「K‐RAS変異検出キットの発売を個別化医療の突破口にしたい」と強調し、戦略的製品として成長ドライバーに位置づけていく方針を示した。
RDKKの09年度売上高は、前年度比3・4%増の430億円。主力の体外診断薬・機器(IVD)は1・9%減となったものの、研究用試薬・機器(AS)と病理検査用試薬・機器(TD)が伸長し、増収となった。
10年度は、新製品16製品を投入し、売上高は3・8%増の446億円を目指す。体外診断薬市場の成長が鈍化する中、AS・TD事業で二桁成長を実現。09年度にマイナス成長となったIVD事業も、K‐RAS遺伝子変異検出キット「セラスクリーン・K‐RAS・ミューテーション・キット」の新発売によって、1・4%の増収を確保する見通しだ。
「セラスクリーン・K‐RAS・ミューテーション・キット」は、癌患者の組織からK‐RAS遺伝子変異を検出する診断薬。K‐RAS遺伝子の変異型、野生型を判別することで、K‐RAS野生型に効果を発揮する抗EGFR抗体「アービタックス」に有効な患者を選別でき、個別化医療が可能となる。
小川氏は、「今後、アービタックスに限らず、複数の抗EGFR抗体薬が市場に登場することを考えれば、K‐RAS遺伝子変異検出キットの発売は大きなインパクトになる」と述べ、「K‐RAS遺伝子変異検出キットの普及によって、無駄な投薬が減らせるため、医療費削減にも貢献できる」と意義を強調した。
現在RDKKでは、K‐RAS以外にも、癌・中枢神経疾患に関わる100種類以上のバイオマーカーをターゲットにキットの開発を進めており、既に50件のプロジェクトが動き出している模様だ。
ロシュグループが個別化医療の推進を打ち出す中、小川氏は「製薬企業と診断薬企業のアライアンスは注目される動き」との見方を示した上で、「ロシュグループ内だけでPHCを支援するというビジネスモデルではない。今後、他の製薬企業との提携もあり得る」との考えを明らかにした。