厚生労働省は、国内未承認や適応外使用となっている医薬品91件について、ライセンスを持つ企業らに開発を要請すると共に、17件について開発企業の募集を開始した。要請品目については、新薬創出・適応外薬解消等促進加算の条件となっている6カ月以内の公知申請資料の提出や、1年以内の治験着手のカウントがスタートしたことになる。
同省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」は、学会や患者団体から要望があった医薬品のうち109件について、第一弾として国内開発を促すことを決めた。
その後、厚労省が企業の意見を求めたところ、サノフィ・アベンティスからエノキサパリンナトリウムの急性冠症候群に対するPCI施行時の使用について、医療アクセスが比較的整備された日本での導入の必要性に疑義が示された。そのため、同剤を除く108件について、開発要望や企業募集を行うことになった。
このうち、ノバルティスファーマのバルサルタンの小児用製剤や、塩野義製薬のメトロニダゾール経口剤については、企業の意見を踏まえて一部の剤形や適応症の開発は保留された。
今後、要請を受けた企業は、1カ月後には開発工程表や公知申請の該当性レポートを提出する。エノキサパリンナトリウムや保留となった剤形、適応症については、関係学会の見解を踏まえて、改めて要請するか判断する。
なお、開発企業を募集した17件のうち、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム塩にはグラクソ・スミスクラインが、プロゲステロンの経膣剤と経口剤には富士製薬工業が既に手を挙げている。
公募対象(=以下は対象疾患等)
▽亜セレン酸ナトリウム=セレン欠乏症により生じる重篤な視力障害、神経障害、心筋障害、毛髪変化の改善
▽アルデスロイキン=悪性黒色腫
▽安息香酸ナトリウム・フェニル酢酸ナトリウム配合剤=尿素サイクル異常症患者における急性発作時の血中アンモニア濃度の低下
▽カルグルミック酸=N-アセチルグルタミン酸合成酵素欠損症
▽コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム塩=吸入用製剤の剤形追加、膵嚢胞線維症の気道感染症
▽デクスラゾキサン=アントラサイクリン系薬剤静脈内投与による血管外漏出
▽デキサメタゾン=4mg錠の剤形追加、抗悪性腫瘍剤投与に伴う消化器症状
▽ニチシノン=チロシン血症I型
▽ホメピゾール=エチレングリコール中毒、メタノール中毒の治療
▽メチレンブルー=薬剤性のメトヘモグロビン血症
▽メトロニダゾール=静注剤の剤形追加、嫌気性菌感染症、アメーバ赤痢
▽リロナセプト=12歳以上のクリオピリン関連周期熱症候群の中の、家族性寒冷蕁麻疹症およびMuckle-Wells症候群における炎症症状の軽減
▽コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム塩=注射剤の剤形追加、適応菌種は多剤耐性緑膿菌、多剤耐性アシネトバクター属、その他の多剤耐性グラム陰性菌。適応症は多剤耐性グラム陰性菌による各種感染症
▽フェニル酪酸ナトリウム=尿素サイクル異常症
▽プロゲステロン=経腟剤の剤形追加、体外受精‐胚移植の際の黄体補充
▽プロゲステロン=経口剤の剤形追加、子宮非摘出閉経女性におけるホルモン補充療法の補助
▽ベタイン=ホモシスチン尿症