薬剤疫学の人材育成が必要に
厚生労働省は19日、「医薬品の安全対策等における医療関係データベース(DB)の活用方策に関する懇談会」に、提言案を提示した。提言案では、レセプト情報や診療情報をベースにした、疫学的に利用可能なDBの基盤整備に向けたロードマップを提示。DB活用のためのインフラ整備は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)と連携して進めるほか、DBを継続的に維持するため、産・学・官で構成する研究コンソーシアムへの研究資金や基金の投入を提案した。また、個人情報の取り扱いなどに対する指針の整備や、DBから必要な情報を収集・解析し、医薬品のリスクを見つけ出す薬剤疫学研究者の育成や、医学・疫学研究の普及に取り組む必要性も示した。
提言案は、▽プロジェクトに期待される成果と推進のための課題▽日本のセンチネル・プロジェクトの推進▽インフラの整備と人材の育成▽情報の取り扱いのルールの整備▽プロジェクト推進に当たり留意すべき事項――で構成されている。
医療情報インフラの整備に向けては、「ロードマップを描く必要がある」とし、短期、中期、長期で取り組むべき内容を示した。
短期的には、国内で2011年度までに、レセプトデータを集約したナショナルDBの構築が予定されていることから、本格稼働する13年度をメドに、PMDAと連携し、医療情報DBのアクセス基盤を整備することを求めた。
また、医療関係DBを活用するに当たり、医療情報に関する個人情報の保護について必要な指針・ガイドラインを整備するべきとした。
FDAの「センチネル・イニシアチブ」では、患者情報の保護の観点から、大規模中央DBを構築せずに、各拠点からのデータの抽出を行い、分析する方法を検討している。
そのため、将来的には一元的なDBを目指すとの目標は掲げつつ、中期的な取り組みとしては、これからのプロジェクト推進の各段階において、データの一元的収集管理のメリット・デメリットを踏まえた、効果的なデータ管理方法を検討すべきとした。
DBから、医薬品の安全対策などに関する必要な情報を収集し、解析する人材育成の必要性も指摘。薬剤をはじめとする情報疫学に加え、臨床疫学、情報セキュリティーなどに関する分野の人材を、総合的に養成することを求めた。
その上で、5年以内の中期的な目標として、薬剤疫学をはじめとした情報疫学の研究を実施するための、主要な大規模データ拠点を国内に数カ所設置し、医療従事者や研究者などが患者の協力を得つつ、薬剤疫学的手法によって診療情報DBを解析し、医薬品に関する疫学的な研究が推進できるような体制を整備すべきとした。
また、体制整備やDBの維持を継続的に行うためには、「研究機関や公的機関のみではなく、関係産業界をはじめとした民間の協力が必要」とし、産・学・官により構成される、研究コンソーシアムへの研究資金や基金の重点的な投入を提案している。
データの提供者となる国民(患者)の理解・協力を得るため、基盤整備のメリットについて、十分な説明が必要とした。
医薬品の安全対策の向上をはじめ、医療の標準化や質向上、新薬開発の迅速化などの期待される成果が享受できるような体制整備も求めた。
懇談会は、6月16日の次回会合で意見を集約し、パブコメを行った上で、7月中に最終提言を取りまとめる。