
スミス社長
6月1日にメルクセローノの新社長に就任したマーク・スミス氏は、本紙のインタビューに対し、2012年からの3年間を「第二の成長期」と位置づけ、抗癌剤「アービタックス」の適応拡大や、肺癌ワクチン「スティミュバックス」など、6~7件の新製品を投入し、15年をメドに国内でグローバル売上高の7%達成を目指す方針を明らかにした。今後、一次治療での使用が認められたアービタックスをはじめ、主力3製品を中心に成長を確保する計画で、スミス氏は「12年までを、第二の成長期に向けた移行期として、上手く活用していきたい」と話した。
同社は、07年10月の設立以来、08年にアービタックス、09年に不妊治療薬「ゴナールエフ」、成長ホルモン製剤注入器「イージーポッド」を相次ぎ発売し、アービタックスを牽引役に、市場を上回る成長を達成してきた。スミス氏はこれまでの約2年半について、「第一の成長期として成功」との認識を示した上で、「12年までは成長トレンドが続き、その後3年は第二の成長期になるだろう」と見通しを語った。
12年以降を見据える第二の成長期では、癌領域でアービタックスの頭頸部癌、胃癌への適応拡大を実現し、肺癌ワクチン「スティミュバックス」を発売。また、不妊治療領域の成長ホルモン製剤2製品に加え、新たに神経変性疾患領域の多発性硬化症治療薬「クラドリビン」を上市する計画だ。第二の成長期に、6~7件の適応拡大と新製品投入を実現することで、15年にはグローバル売上高の7%達成を目指す。
人員増も予定しており、特に営業部門でアービタックスの専門MRを30~40人増員する。スミス氏は「データこそが癌治療の意思決定の根幹。アービタックスの専門MRは、特にデータについて、いかに医師と科学的な会話ができるかにかかっている」と指摘。専門家集団としてのMRを増員することで、アービタックスの最大化を図る方針を打ち出す。
特にアービタックスは、KRAS遺伝子が野生型の大腸癌患者で高い奏効率を示すことが判明していることから、スミス氏は「MRの専門性を高め、きちんとデータを医師に届けていくことは大切だが、いかにKRAS遺伝子検査のデータを臨床現場に取り込んでいくかも重要になる」と課題を挙げる。
昨年10月から、国内で大腸癌におけるKRAS遺伝子変異率を検討する臨床研究がスタートし、4月までに約5000人の大腸癌患者が、KRAS遺伝子検査を受けたという。スミス氏は「4月にKRAS遺伝子検査が保険適用となったが、既にアービタックスを処方している医療機関の半数以上で、検査を提供できる環境が整っている。KRASの検査と一次治療での使用によって、大腸癌の治癒を含めた様々な可能性が生まれてくる」と強調した。
今後、一次治療での使用が可能となったアービタックスを中心に売上を拡大し、第二の成長期に備えることになるが、スミス氏は「12年までを、第二の成長期に上手くつなぐ移行期として活用していきたい」との方針を示す。社内的にも顧客主義、現場主義、人材開発の三つの柱によるベストファーマキャンペーンを展開し、第二の成長期に向けた準備を進めていく考えだ。