草間真紀子氏(東京大学大学院薬学系研究科)らのグループと日本薬剤師会が共同で行った、「ブラウンバッグ運動‐薬局薬剤師による服用薬の包括的な併用実態調査」研究報告書第2版がまとまった。報告書では、ブラウンバッグ運動を展開することで、薬剤師による総合的な服薬指導が行われ、処方薬とOTC薬・サプリメントの併用禁忌などの早期発見や、健康被害の未然防止につながる可能性が示唆された。
ブラウンバッグ運動は、患者が日常的に服用している処方薬、OTC薬、サプリメントを点検し、副作用や相互作用などの危険性を見つけることにより、潜在的な問題を早期に発見し、早期の対策につなげる運動。1980年代に米国で始まったものだが、日薬では日本でもかかりつけ薬局の役割を考える上で重要とし、「ゲット・ジ・アンサーズ」運動の一部として支援している。
草間氏らは、処方薬とOTC薬・サプリメントの併用に関して、薬剤師による総合的な服薬指導が実施されることを目的に、「高齢者薬物治療適正化研究グループ」を立ち上げ、処方薬とOTC薬など、併用への薬剤師の関与を調査してきた。
2009年度は、患者が服用薬を保険薬局窓口に持参する方式で、薬剤師が対面で使用実態を確認し、相談応需する「ブラウンバッグ運動」を実施した。10年度は、保険薬局の利用者以外にも調査対象を拡大して実施し、今回、第2版としてまとめた。
調査の目的は大きく分け、▽サプリメント・OTC薬・処方薬の併用実態、相談に関する認識や嗜好の把握▽薬局来局者以外を対象としたブラウンバッグ運動実施による、適正使用のための相談に求められる事項の把握--の2点。
調査方法は、まず茨城県土浦・石岡・龍ヶ崎地区の健康関連イベント参加者を対象に、医薬品やOTC薬の使用・併用状況、相談に関する認識や嗜好をアンケート調査した(回答者は647人)。次いで、土浦地区で薬剤師への相談に求める事項を、薬局来局者と非来局者を対象に実施した(希望者を募り51人がエントリー)
アンケート結果によると、「サプリメントや処方薬とののみ合わせを調べてほしい」と38%が答えた。この結果は、処方薬やサプリメント、OTC薬の服用有無、かかりつけ薬局の有無には依存しなかった。処方薬とサプリメントなどの併用は、年齢が高くなるほど多かった。
お薬手帳については、処方調剤を門前薬局もしくは自宅近くで行いたい人の方が、院内で調剤してもらいたい人より活用していた。報告書では、医薬分業が進むことで、患者が薬歴を自己管理する意識が高まることを指摘している。
希望者に対するブラウンバッグ運動では、重複投与が3人(4件)で見つかった。参加者からは、薬剤師による総合的な服薬指導によって、「服用薬使用上の不安軽減につながる」との意見が、過半数以上寄せられた。否定的な意見では、薬を持参する手間や所要時間に関するものがあった。
報告書では、薬剤師が重複投与などを早期発見をすることで、患者に注意喚起し、健康被害を未然に防げた可能性があるとし、今後はより広範囲の人に参加してもらえる形態を考慮しながら、ブラウンバッグ運動を発展させていくことが望ましいとした。