今年の年明けは、例年に比較して気温が高く穏やかな天候でスタートした。そうした陽気とは裏腹に、医療関連業界にとっては正念場となる厳しい1年の幕開けでもある。最大の焦点となるのは4月の診療報酬改定の行方であろう。
既知のとおり、昨年末に発表された診療報酬改定率は、技術料などの診療報酬本体は0.49%のプラス改定とする一方で、薬価はマイナス1.22%、医療材料はマイナス0.11%とそれぞれ引き下げた。また、医薬品の市場拡大再算定のマイナス0.19%を加えると全体では1.03%の引き下げとなった。
今月から中央社会保険医療協議会で具体的な診療報酬点数の設定に関する審議が行われ、2月中旬頃に厚生労働大臣に対し、改定案が答申される予定だ。
16年度改定は、団塊世代が後期高齢者となる25年の医療提供体制を視野に入れた社会保障制度改革の流れとリンクするものだ。
「社会保障・税一体改革大綱」に沿った▽病院・病床機能の分化・強化と連携▽在宅医療の充実、重点化・効率化▽地域包括ケアシステムの構築――などの実現イメージを持ち、薬局薬剤師も含めて、あるべき医療・介護の実現に向けた取り組みが必要になってくるだろう。
一方で、厚労省は20年後の保健医療政策のビジョンとその道筋を示す「保険医療2035提言書」を昨年6月に策定した。特に35年までのアクションとして注目したいのは、「医療提供者の技術、医療用品の効能など(医療技術)を患者の価値を考慮して評価、診療報酬点数に反映」とされている点だ。厚生労働省は4月の改定に伴い、再算定品目を指定して費用対効果の指標を試行的に導入する。16年度内に再分析を開始した上で、専門組織により総合的に評価。それをもとにした価格算定案の作成や費用対効果評価の再算定は17年度以降となる見通しだ。
10年後の25年には、高齢者人口は約3500万人に達すると推計され、4人に1人が75歳以上という事態を迎え、医療費の増加、労働人口の負担の増大が国としての基盤を揺るがしかねない状況にある。
さらにその10年後の35年に向けて医療保険財源が不足するようであれば医薬品・医療機器の評価のみならず、技術料についても国民医療に貢献しないと判断すれば、価格の引き下げを要求したり、保険から外したりすることで医療費を抑制する方向に向かうことも考えられる。
10年後、そして20年後の社会情勢や自身の健康状態すらイメージすることは難しいが、人口推計などからも社会保障制度の改革は、待ったなしの状況に置かれているのは間違いない。
今年の干支である「丙申」はこれまでの頑張り、努力が実を結びはじめる年とも言われている。医療、薬業界を含めた現役の関係者らが中長期的視野に基づき、皆保険制度を次世代へつなげるスタートを切る年となれるよう期待したい。