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変化への対応力強化が急務

2023年02月03日 (金)

 医療・医薬品を取り巻く環境は、大きく変化している。2020年1月15日、日本初の新型コロナウイルス感染症陽性者が確認されてから3年が経過した。厚生労働省発表のデータによると、23年1月末での累計陽性者数は3250万人、累計死者数は6万8000人となっている。

 今週になって、第8波の感染状況グラフは下降線を辿っているが、これまでの経験から推考すれば、山谷の繰り返しは今後も続くと見るのが妥当だろう。では、ウィズコロナの対応をどうするのか。

 政府は、新型コロナウイルス感染症を感染症法での位置づけを今の2類相当から、鳥・新型を除いたインフルエンザなどと同レベルの5類へ移す方針を決定した。これによって感染者の全数把握から定点把握となるが、5類へ移行するとしても課題は山積している。

 まずは、医療提供体制の確保である。一般医療機関でも感染者を段階的に受け入れる体制を整備する予定だが、感染防止対策を施していない施設だと対応できない。感染防止に必要な対策を進めるには新たなコストが必要だ。また、これまで新型コロナの対策費用は全て公費で賄っていたが、5類になれば一部患者負担となるので、ここでも費用の問題が存在する。

 類型変更は、大型連休後の5月8日に実施されるようであり、それまでの3カ月間で適切な対応を可能とする施策が急がれる。

 医療・医薬品業界においても、インターネット、デジタルの普及による影響は大きい。医療ではネットでのオンライン診療、高精度画像伝送による遠隔診療、医薬品開発では分散型臨床試験、リモート治験などと訳されるDCT、全国各地でのドローン物流の実証実験などが始まっているが、1月26日からは電子処方箋システムが本格稼働した。ところが、肝心の電子処方箋に対応可能な医療機関・薬局数は、22日現在でわずか167件であった。

 同システムに対応可能な医療機関・薬局が本格稼働時に十分な数に達しなかった背景には、システムベンダーの対応遅れなどが指摘されているが、他にもいくつかのハードルがあったのではないか。オンライン資格確認等システム活用、HPKIカードによる電子署名など、必要となる事前準備手続がいろいろあることも遠因かもしれない。電子処方箋導入の事前申請施設数は3万余となっており、厚労省は、順次、対応可能な施設の拡大を図っていく意向を示している。

 今では、メタバース、デジタルツインなどの新たな空間ビジネスも盛んだ。リアルしかなかった以前では、考えも及ばない現象が動き出している。常に大きな変化を続ける現代においては、その対応能力こそが生き残れる前提条件となる。官民の叡智と行動力を発揮して対応力を強めて、社会の発展へ貢献していくことが肝要だろう。



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