OTC医薬品、処方箋なしで医療用医薬品を販売する零売といった医療保険外の医薬品使用をめぐる議論が活発化しそうな気配を見せ始めている。大きな動きの一つは、日本OTC医薬品協会が新設したアドバイザリーボードだ。
医師や薬剤師、健康保険組合、ドラッグストア、患者・消費者らの代表で構成し、セルフメディケーション、スイッチ化を含むOTC薬の使用促進策の議論を深め、政府や関係団体に取り組みを促すというもので、OTC薬の使用促進目標の検討も掲げている。政府に要望するだけでなく、当事者である業界として取り組むべきことがあるとの実践を意識したものとされ、かつてない一歩を踏み出した形になった。
また、厚生労働省の「医薬品の販売制度に関する検討会」が立ち上がった。2月に開かれた初会合では“零売”が議題となり、取り扱いに関する議論が始まった。構成員からは、ルールを逸脱して零売を行う薬局が横行している実態を問題視する意見が多かったようだが、規制強化だけではなく、問題あるケースをしっかり規制しつつ、どのような有効活用の方法があるかも含め議論する必要があるだろう。
日本薬剤師会が提案しているOTC薬の新たな類型として、「医療用一般用共用医薬品(仮称)」の取り扱いも注目だ。医療用医薬品と要指導医薬品の中間に位置し、処方箋交付と薬局での販売を両方可能にするもので、供給困難で市場からなくなってしまう医療用医薬品や、処方箋なしでも患者アクセスを確保する必要性が高い医療用医薬品が対象に想定されており、零売とは違った仕組みの構築を目指すとしている。
医療保険財政のひっ迫が予測される中、日本製薬工業協会も「公的保険でカバーする領域の線引き」を提言しており、その給付範囲や負担構図をめぐる国民的議論を求めている。新薬中心の業界団体も膨らみ続ける研究開発費を前に、何とか革新的新薬だけは守ろうと行動せざるを得ない状況になったということだろう。
遅かれ早かれ、OTC薬などの有効活用は議論されなければならない状況だった。薬局の薬剤師にとっても、OTC薬や処方箋なし医薬品の有効活用は、職能発揮のチャンスが広がることになる。
コロナ禍では、自宅療養時に解熱鎮痛剤や抗原検査キットの備蓄が求められ、自らコロナ感染に備えた行動が求められた。これがセルフメディケーションを認識してもらえる大きなきっかけの一つになったと言えるのではないだろうか。
自分でOTC薬やOTC検査キットを備蓄するような機運が高まりつつある現在、有効なOTC薬や処方箋なしの医薬品販売、さらに新類型である共用医薬品のあり方を広く議論する好機でもある。これまでなかなか進まなかった議論の進展に期待したい。