米食品医薬品局(FDA)は5月3日、RSウイルス(呼吸器合胞体ウイルス)に対する初のワクチンであるArexvyを承認した。ワクチンは、60歳以上でのRSウイルスによる下気道感染症の予防を目的としている。この承認を受けて米疾病対策センター(CDC)は、今夏の末にも、接種対象を全高齢者とするか、重症化リスクの高い高齢者に限定するかを検討するものと見込まれている。
RSウイルスは感染力が強く、年齢を問わず、呼吸器系の感染症を引き起こす。RSウイルスの流行は通常、秋に始まり冬にピークを迎える。高齢者では、RSウイルスは、肺炎や細気管支炎を引き起こすこともある下気道疾患の一般的な原因である。CDCによると、米国では、RSウイルスへの感染により毎年65歳以上の6万~12万人が入院し、6,000~1万人が死亡しているという。
Arexvyの安全性と有効性は、米国やヨーロッパ、アジアなどの国々の60歳以上の人を対象に実施されている、プラセボ対照ランダム化比較試験の結果に基づき検討された。この試験では、対照者がArexvyを単回接種する群(1万2,466人)とプラセボを接種する群(1万2,494人)にランダムに割り付けられ、3シーズンにわたって、ワクチンの有効性の持続期間や、接種を繰り返すことの安全性と有効性を評価する予定である。
今回の承認は、3つのRSウイルスシーズンのうちの最初のシーズンにおけるArexvyの単回接種に関するデータに基づいている。このデータからArexvyは、RSウイルスによる下気道感染症の予防に対しては82.6%の有効性、重症下気道感染症のリスク低減に対しては94.1%の有効性を持つことが示された。
Arexvyを接種した人が最も多く報告した副作用は、注射部位の痛み、倦怠感、筋肉痛、頭痛、関節のこわばりや痛みであった。また、Arexvy接種群では10人、プラセボ接種群では4人に、ワクチンまたはプラセボ接種後30日以内に心房細動が生じたことも報告されている。
一方、Arexvyに関する別の二つの臨床試験では、懸念すべき副作用が認められ、さらなる検討が必要とされている。このうちの885人を対象にした一つの試験では、試験参加者にFDA承認のインフルエンザワクチンとともにArexvyが投与された。その結果、2人が投与からそれぞれ7日後と22日後に急性散在性脳脊髄炎(ADEM)を発症し、うち1人が死亡した。1,653人を対象にしたもう一つの試験では、Arexvyを接種した試験参加者の1人が、投与から9日後にギラン・バレー症候群を発症した。
FDAは、Arexvyの製造元であるGlaxoSmithKline Biologicals社に対し、ギラン・バレー症候群およびADEMという重大なリスクの兆候を評価するための市販後調査を実施するよう求めている。一方、同社は、市販後試験で心房細動を評価することも確約している。(HealthDay News 2023年5月3日)
Source
https://consumer.healthday.com/physician-s-briefing-rsv-2659948927.html
More Information
https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-first-respiratory-syncytial-virus-rsv-vaccine