今月22日、日本OTC医薬品協会(OTC薬協)の新会長に就任した杉本雅史氏(ロート製薬社長)は記者会見で、今後の活動方針などを説明した。そこで示されたのは、協会の独りよがりではなく、国民、行政、医師会、歯科医師会、薬剤師会、健康保険組合連合会などとの連携や協力を念頭に置いた活動強化やOTC医薬品情報提供サービスの支援、OTC医薬品の品質・信頼性向上に向けた取り組みなどの内容だった。
杉本氏は「OTC医薬品が活用される環境整備は、残念ながら順調に進んでいるとは言えない状況」としつつ、既にスタートしているアドバイザリーボードで協会活動の見直しについて議論を進め、具体的な進捗指標の設定に向け取り組んでいくと強調した。
注目したいのは、2月に新設したアドバイザリーボードの活動だ。OTC薬協の説明では、協会の主張や事業活動全般に対して、特に厚生労働省などに行うセルフケア・セルフメディケーション推進策への提言やOTC医薬品の活用に関連する政策などについて、より広い視野から有識者の意見を聞く場として設置したものだという。
これまでに2回の会合を開催しており、杉本氏は「広い視野や多くの知見から、国民の健康医療に貢献できる政策提言や活動へと発展させていきたい」と方針を説明した。
現在、OTC医薬品の使用拡大への環境整備に向け、様々な議論が進められている。OTC医薬品を活用したセルフメディケーションの推進に必要なヘルスリテラシーの向上、スイッチOTC開発促進などによる生活者の選択肢拡充、時代に即した医薬品の販売制度のあり方などである。
その一方、少子高齢化や人口減少で国内市場が縮小する方向に向かう中で、業界として海外市場に活路を見出す展開も課題となる。
基本的には、誰のためのセルフメディケーション推進で、そのためにどのようなOTC医薬品を活用する環境整備が必要かという検討が肝心となる。
国民に対して、治療効果の高いOTC医薬品を普及させていくことと、生活者がOTC医薬品に容易にアクセスできるということは、違う視点で検討していかなければならないだろう。
セルフメディケーションを推進していくためには、医薬品に関するヘルスリテラシーの向上を図ると共に、薬剤師などの専門家の関与をどう位置づけていくかがポイントとなる。
単に、高騰する医療費抑制という観点でOTC医薬品の普及促進を図るのであれば、医療用医薬品のOTC類似薬の給付率引き下げや、保険適用除外とする議論が再燃しかねない。
その意味で、OTC薬協が設置したアドバイザリーボードでのしっかりした議論を踏まえ、コンセンサスを得た活動内容の取り組みに期待したいところだ。