薬価制度見直しと医薬品流通問題に関する動きが活発化している。公的には、厚生労働省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」で議論が重ねられている。4月27日の第12回会合では、供給不安、ドラッグ・ラグの増加、ドラッグ・ロス発生の懸念、創薬力の低下、サプライチェーンリスク、流通取引の課題とその要因を指摘・分析しつつ、特許満了医薬品、創薬・新薬、サプライチェーン流通取引、その他全体的な課題の各分野における目指す姿と対策例が報告書骨子案として提示された。今後、報告書がまとまれば、中央社会保険医療協議会などでの議論に付されることになると思われる。
一方、民間レベルでは、公益財団法人医療科学研究所(江利川毅理事長)に設置された「医薬品流通問題研究プロジェクト」の報告書が4月25日に公表された。同プロジェクトは、医薬品卸売業の実態と市場構造をできるだけ明らかにし、特徴と問題点を整理し、それを踏まえて医薬品流通の改善、薬価制度のあり方について政策的な提言を行うことを目的に、2021年12月に立ち上げられた。メンバーには、医薬品流通問題の解決とその解決策の立案に強い関心を持つ視点が異なるこの筋の専門家・有識者が名を連ねている。
始動以降、4月までに10回の会合とeメールでの議論を経て報告書がまとめられた。34ページにおよぶ報告書は、5節で構成されている。プロジェクトリーダーの冨田健司氏(同志社大学商学部教授)序文によれば、まず1節でプロジェクトの問題意識を明確化した上で、2節では医薬品流通における医薬品卸売業の機能を概観して特徴と特殊性を把握・指摘し、3節で医薬品流通問題に係る歴史的経緯について要点を絞って提示し、4節の医薬品流通の市場構造の整理と、医薬品卸売業営業現場の実態をまとめた。そして、最終節で「医薬品卸売業の目指すべき方向と政策のあり方」について提言を行っている。
提言は、医薬品流通の特性―前提としての薬価差と医の倫理、今後の医薬品流通政策のあるべき姿、薬価制度のあり方について、医薬品卸売業への期待に関して言及している。実態と問題点を正確に捉えて指摘しつつ、新薬の特性に応じた薬価制度、医薬品の安定供給に資する薬価制度、薬価に関連するその他制度見直しの論点について具体的な政策提言を示した。
また、一般社団法人医療・医薬総合研究所の薬価流通政策研究会(くすり未来塾)も第7弾となる提言を公表している。いかに優れた提言でも、政治、行政、関連利益者などのパワーバランスが大きく影響して、提言通りたやすく実行されることは少ない。英知を集めてまとめられた諸々の提言をスルーすることなく、現存する課題解決に向け、制度や施策の見直しに反映されることを望む。