後発品の供給不安が続く中、後発品企業の業界再編に向けた機運が高まりつつある。昨年8月末から議論を進めてきた「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の報告書骨子案が4月末の会合で公表された。
後発品産業・企業は、品質が確保された医薬品について将来にわたって安定的に供給し続けることがあるべき姿とし、190社以上の製造販売企業や約1万1000品目に上る品目数の適正化や業界再編の必要性にも言及した。
後発品の約4割が出荷停止、限定出荷となっている供給不安の背景には、製造能力が乏しい企業が多数であることによる少量多品目生産構造があると、検討会でも多くの構成員から指摘された。比較的収益性が期待できる収載直後の後発品に多くの後発品企業が参入することで、過剰な価格競争を招き、薬価との乖離から毎年薬価改定で薬価が引き下げられ、低収益に陥ってしまう。低収益品目を補填するために多くの企業が新規収載品を上市し、さらなる少量多品目生産構造を生み出す悪循環につながっている。
骨子では、少量多品目構造を解消するため企業や品目の統合を進め、品目統合に合わせた製造ライン増設等の支援を検討するとし、一定の供給量の担保や企業統合を推進する観点から、企業の製造能力等の企業情報の可視化を実施することも記載した。
後発品数量シェア80%を目指した業界の成長期には大手企業が中小企業を買収したり、中堅企業間の統合、海外大手後発品企業による国内企業の買収など、規模を拡大する企業戦略から業界再編が行われてきた。しかし、現在のような成熟期を迎えた後発品産業構造では大きな市場拡大は望めず、大手企業も業界再編に向けたM&Aに乗り出すとは言い難い。
既に上位8社で後発品市場シェア50%を超えている状況を考えれば、国が主導して企業・品目統合を進めるべきだろう。
業界再編で重要となるのは安定供給を継続する企業が生き残る産業構造を作り上げることだ。少量生産を行う企業の参入抑制や安定供給可能な企業を薬価で評価することも対策例に盛り込まれた。
後発品上市後に収益が期待できなくなった時点で撤退する企業の売り逃げが問題視された一方で、多数の赤字品目を抱えながらも供給を続ける企業もある。新薬創出等加算制度で企業の創薬力を評価する枠組みがあるように、安定供給力を評価する制度も重要な検討事項だ。
業界再編に向けては、新設される会議体で引き続き具体策を協議していく方向性が示された。後発品産業のあるべき姿を実現するためには、安定供給し続ける企業を支える体制に加え、新薬と同様に海外市場で国内メーカーが戦うための産業育成の視点も必要だ。国がビジョンを示す時が来ている。