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危機回避へ万全の備えが必要に

2023年07月14日 (金)

 コロナウイルス感染は完全に収束していないが、影響が少なくなった中で夏休みシーズンを迎えることとなった。多くの人たちが、海外旅行を計画し楽しみにしていることだろう。だが、海外旅行にはリスクも存在するので、未然にリスクを回避する知識を持つことも肝心だ。

 国立国際医療研究センター病院AMR(薬剤耐性)臨床リファレンスセンターは5日、海外旅行での健康管理や薬に関する調査結果を発表した。それによると、海外旅行時には生水を飲まない、常備薬持参など9割が体調管理に気を付けていたが、約半数は体調不良を経験しており、下痢、腹痛、発熱が多かった。海外旅行中に抗菌薬を購入したことがあると回答した人の割合は32.5%だった。

 同院国際感染症センター・総合感染症科の感染症専門医である守山祐樹医師は、「日本でかかりにくい病気にかかるリスク」と「薬剤耐性菌に感染するリスク」を2大リスクに挙げると共に、注意点として自己判断で抗菌薬を購入・服用しないことなど「海外旅行で気を付ける八つのポイント」を指摘している。

 AMR臨床リファレンスセンターは、海外旅行によって薬剤耐性菌、特に感染症治療薬の切り札とされるカルバペネム系抗菌薬が効かない薬剤耐性菌が国内に流入しないように対策しておくことが必要だと警鐘を鳴らしている。

 医薬品業界を顧みれば、コロナ禍以前にはワクチンの開発・製造が滞っていた。2021年6月に閣議決定されたワクチン開発・生産体制強化戦略では、「わが国は公衆衛生の向上とそれに伴う感染症への関心の低下をはじめとし、様々な要因から、長らくワクチン開発・生産に必要な課題に十分に取り組んでこなかった」と分析している。

 同戦略では、ワクチンの迅速な開発・供給を可能にする体制構築のために必要な政策として、研究開発拠点形成、治験環境の整備・拡充、薬事承認プロセスの迅速化と基準整備、ワクチン製造拠点の整備、創薬ベンチャーの育成、ワクチン開発・製造産業の育成・振興、国際協調の推進などに取り組むとした。

 また、原薬についても19年にほぼ全てを中国に依存していた抗菌薬セファゾリンの原材料生産工場のトラブルで出荷停止・供給危機に陥り、日本の医療現場に大きな混乱を与えたことは記憶に新しい。先日、MeijiSeikaファルマのペニシリン原薬の国産化を図る取り組みが、厚生労働大臣による「抗菌性物質製剤の安定供給にかかる計画」の認定を受けた。

 ワクチン開発・製造、原薬のサプライチェーン適正化は、日本の安全保障の一環に位置づけられるものであり、過去の反省に立って、国内での開発、製造、安定供給を実現しないと、医療・医薬品が国民に貢献できなくなる懸念が生じることを関係者全員が共通認識として取り組まなければならない。



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