調剤業務の一部外部委託についての議論や取り組みに向けた動きが佳境に入ってきた。外部委託の目的は、薬局薬剤師の対物業務の効率化を図り、対人業務に注力できるようにすることだ。2021年4月の規制改革推進会議「医療・介護ワーキング・グループ」(当時)で調剤業務の効率化が取り上げられて以降、本格的な議論が始まり、その結果、22年6月に閣議決定した規制改革実施計画で調剤業務の外部委託解禁が明記された。
同年7月の厚生労働省の「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」の取りまとめでも外部委託を可能とすることが明記された。また、昨年度に作成された厚労省研究班によるガイドライン(暫定版)も公表され、これらを踏まえて厚労省として23年度に外部委託の検証を行う流れにある。
一方、こうした国の取り組みとは別に、今年4月、大阪などで保険薬局を展開するファルメディコが国家戦略特区で調剤業務の一部を外部委託する提案を行っていたことが明らかになり、大きく注目された。厚労省は、同一の三次医療圏内での実施と所在地の地方公共団体の参画が前提との回答を示し、提案は見送られた格好となった。
その後、ファルメディコは単独ではなく、大手、中小の薬局や関連事業者の参画のもと外部委託の運用方法を検証する「薬局DX推進コンソーシアム」を設立。国家戦略特区事業として実施エリアを大阪市内に限定し、内閣府への再提案を目指している。
コンソーシアムでは、実施に向け、コンソーシアム内に▽安全性▽有効性▽経済性を検討する各委員会を設置。医薬品配送のスキーム、監査の方法論や責任の基準、委受託の価格のあり方、採算性などをまとめる予定という。
こうした特区を活用した動きに対し、日本薬剤師会などは「乱暴」と反発している。コンソーシアム側は、地元の大阪府薬剤師会や日薬とも情報共有を図っていきたいとの考えを示しているが、両者の溝は埋まっていない。
それならば、国による検証もコンソーシアムによる検証も、その是非を問わず両者の実証の結果を踏まえて、次のステージに向かってみてはどうか。既に調剤業務の一部外部委託は検証段階に入っていると言える。
全国的には薬局6万軒、薬剤師18万人の対人機能の強化、戦力化が各地域では重要になる。その効果が発揮されるのは、仕組みを変えるだけではなく、薬剤師のモチベーションがどこまで高まるかにもかかっている。
現状では薬剤師の認識に大きな差異が見られる状況だが、調剤の一部外部委託が単なる経済合理性だけではなく、患者や地域医療のため、さらに医療費削減などの効果も見据え、薬剤師が本来の職能をこれまで以上に発揮できる方向につなげられるのではないか。