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HPN普及に向け諸規則の整備を

2006年08月28日 (月)

 癌のターミナルケアや、クローン病等の消化器疾患を有する患者が、在宅医療を希望するケースが年々増えている。これら経口による栄養補給が十分できない患者には、アミノ酸・ビタミンB1、ブドウ糖、電解質などの栄養素を含有した高カロリー輸液の点滴投与が不可欠である。

 高カロリー輸液の点滴は、高濃度のブドウ糖を含むことが多く、末梢静脈では血管炎を起こす。従って、原則として首筋など心臓近くの中心静脈に、輸液チューブ(カテーテル)を入れて行われるケースが多い。経中心静脈高カロリー輸液は、通常IVH(Intravenous Hyperalimentation)と呼ばれ、在宅で高カロリー輸液を点滴するときには、HPN(在宅中心静脈栄養、Home Parenteral Nutrition)と呼称される。

 HPNは、長期間経口摂取ができない患者の在宅医療にとって、必要不可欠な手法である。だが、HPNを調製するための無菌製剤室を備えた薬局は、全国でも未だに100軒程度しかない。しかも、その多くが東京周辺に集中しており、大阪ですら僅か約10軒に過ぎない。HPNを施行する環境を整えなければ、在宅医療を切望する患者のニーズを満たすことは不可能である。HPNに携わる薬局数が現状のままでは、真の在宅医療は実現しないと言っても過言ではないだろう。

 だが、無菌製剤室の設置は、コストが高くつくため、全ての薬局に求めることは困難だ。大阪府薬では今年度中に、大阪府薬会館内に会営中央薬局(仮称)を開設し、HPNの調製を行う無菌製剤室を設置する。さらに、07年度には会営吹田薬局にも、無菌製剤室の設置を予定している。

 HPNを普及させるためには、大阪府薬のように各地の基幹薬局に無菌製剤室を設置すると同時に、その設備を共同利用できるように、現行の規則を変更する必要がある。

 無菌製剤室を共同利用する上でネックとなるのが、「一つの薬局で、一つの処方せんの調剤を完了しなければならない」という規定だ。これはHPNの普及のみならず、かかりつけ薬局の体制にも影響を与えることが懸念される。

 薬局がそれまで応需していた患者の処方せんに、新たに輸液が追加された場合、その薬局に無菌調製設備がなければ、全ての調剤ができなくなるという不都合が生じるからだ。応需薬局の変更を余儀なくされるため、それまで患者とかかりつけ薬局の間で築き上げてきた信頼関係が、無に帰する恐れもある。

 これらの問題を解決するには、輸液部分の調剤だけを、無菌製剤室を備えた薬局が代行できる、あるいは処方せんを応需した薬剤師が、その施設を利用して輸液の調製を行えるような規則の改正が望まれる。

 開放型病院制度では、開業医がオープン病院に患者を紹介した後も、ベッドサイドでその患者の治療に参加することを認めている。薬局にもぜひ、オープン病院のような仕組みの導入を期待したい。

 HPN普及の足枷になっているもう一つは、経済的な問題である。フィルターと輸液バッグをつなぐカテーテルや針などの納入価格が保険点数より高く、HPNの実施件数を増やせば増やすほど、薬局の赤字が膨らむのが現状だ。薬局がHPNの業務内容に見合った報酬を得られるように、日本薬剤師会は強く申し入れる必要があるだろう。

 一方、HPNは軽量のものでも、1週間分で1セット10kg程度になり、通常は一人の薬剤師が車で患者数人分を運んでいる。6月からは駐車違反の取り締まりが厳しくなり、コインパーキングと患者宅が離れていても、そこに車を止めて台車で運搬せざるを得ない。薬剤師が在宅医療に参画する場合も、医師のような駐車許可書が認められるように、当局へ働きかけることも重要だ。

 在宅医療の推進は、国の方針でもある。現在の実情を踏まえた規則の改正と環境整備が急がれる。




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