医薬品卸経営に関する今年4月現在の調査概況がまとまった。1972年から行われており今年で34回目となる。調査対象は、日本医薬品卸業連合会の会員(本社)131社で、昨年から6社減った。日本の卸が減少している流れは変わらないようだ。
昨年と大きく違う点は、発表時期が昨年より約1カ月早まったこと。経営状況をより早くオープンにするため、ある程度回答が揃った時点で、公表する方針に転換したものだ。情報が集まったら、一刻も早く実態を伝えようとする薬卸連の姿勢は評価されるだろう。
情報開示が早いのは結構だが、いざ実数で昨年と比較しようと思うと、大きな問題が出てくる。それは回答した企業が、昨年の81社から10社減り、71社となったためだ。回答数が10社も違っては、簡単には数字を読みとれないのも事実である。
71社のうち有効回答だった70社総計の状況を見ると、年商規模区分や事業所数、従業員数、年間売上高などの実数は、当然、昨年の数字を下回っており、単純な比較・分析は難しい。この点に関して薬卸連は、昨年と同じ程度の回答が集まった時点で、詳細な数字を公表する予定としている。
昨年と比較可能な経営指標について見ると、売上高の伸び率は3・76%。クレコンR&Cによるデータ数値3・64%とほぼ同じであり、市場実勢を反映していると言えよう。2、3年前までは、薬卸連が集計した売上高伸び率とクレコンデータの間には、203ポイントの乖離が見られていた。卸がグループ化し、親子間での売上二重計上が無視できない規模になっていたからで、昨年から親子間の売上高を控除して補正した結果、両者の数字は近づいた。
販管費、人件費、従業員数の伸び率はいずれも前年から減少し、販管費率、人件費率、交際費率、販促費率、車両費率なども軒並み前年から低下していることから、地道なコスト削減に努めていることが見て取れる。
加えて物流部門への投資を充実させた結果、在庫月数が初めて0・5カ月を割り込み0・48カ月に改善した。債務月数は3カ月台、売掛債権月数は2カ月台にそれぞれ初めて突入し、金融・債権管理も強化されていることが、数字の上からも明らかだ。
卸が最も重視している売上総利益率は、過去最低の7・91%を記録してしまったが、対前年減少率は0・05ポイント(05年は0・34ポイント)にまで抑え込んだ。最近の卸経営で最大の失敗とまで言われる04年度の価格大暴落を反省し、招いた要因を改善するため、営業戦略を大転換した効果にほかならない。
医薬品流通の中間に位置する卸業は、メーカーと得意先の狭間で、常に川上・川下の双方に気を遣うと同時に、自らは体の一部である大切な従業員を減らし続けるなど、文字通り身を削りながら何とか経営を維持してきた。中間流通業という性質上、利益率が低い卸は、今後も道を踏み外さないようコンプライアンスを徹底し、わが国医薬品流通の特徴である“毛細血管型流通”の本領を発揮すべく、日々、努力を重ねていくしかない。
先月から、中央社会保険医療協議会で薬価制度の見直しが始まった。多大な卸の企業コスト、メーカーや医療機関も含め社会的コストが必要になる薬価の頻回改定を回避することが、特に医家向け卸の経営にとっては、非常に重要な課題と言えよう。