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米食品医薬品局(FDA)は1月16日、12歳以上の輸血を要するβサラセミア患者に対する治療として、Casgevy(キャスジェビー、一般名exagamglogene autotemcel)を承認したことを発表した。同剤は2023年12月、ゲノム編集技術CRISPRを使った医薬品として米国で初承認されており、鎌状赤血球症に続いて今回、βサラセミアにも適応拡大された。
キャスジェビーは1回使用すれば、患者の血液細胞のDNAを恒久的に変化させるが、決して安価な治療法ではないと専門家は指摘している。CNNの報道によれば、同剤を鎌状赤血球症やβサラセミアに対する治療として使用する場合、価格(list price)は220万ドル(約3億2000万円)となる。
FDAバイオ医薬品評価研究センターの治療用製品室長であるNicole Verdun氏は、FDAのニュースリリースで「今日の承認は、βサラセミア患者に新たな治療選択肢を提供する過程での重要な一歩となる」と述べ、「CRISPR/Cas9技術を用いたこの疾患に対する細胞ベースの遺伝子治療の承認は、最も有望で最先端の医療技術を活用した、安全かつ有効な治療法を支持するというFDAの継続的な取り組みに基づいたものだ」と付け加えている。
今回の承認は予想されていたことではあるが、FDAは期限よりも約2カ月早く決定を下している。
キャスジェビーの治療では、まず患者の造血幹細胞を採取し、ゲノム編集技術であるCRISPR/Cas9を用いて遺伝子改変を行う。改変した造血幹細胞は、患者の体内に戻されると骨盤内に生着する。これにより、通常は胎児期のみ高発現する胎児性ヘモグロビンの産生が促進され、酸素の供給が増えて貧血症状が緩和されるという。
なお、最もよく見られる副作用として、口内炎、発熱性好中球減少症、食欲減退などが報告されている。(HealthDay News 2024年1月17日)
(参考情報)
https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-roundup-january-16-2024
https://edition.cnn.com/2024/01/16/health/crispr-casgevy-beta-thalassemia/index.html