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【日本薬学会第144年会】創薬科学賞受賞研究 睡眠障害治療薬を志向したオレキシン1/2受容体新規デュアルアンタゴニスト レンボレキサントの創製

2024年03月26日 (火)

寺内太朗、上野孝哉、朝倉省二、久保田直樹(エーザイ)
ボイクマン・カーステン(元エーザイ)

 睡眠障害を症状とする疾患としては様々なものが知られているが、その中で特に多くの方が苦しんでおられるのが不眠症である。日本の一般成人を対象にした疫学調査によれば、成人の21.4%が不眠を訴えている。睡眠は健全な生命活動維持に不可欠な生体現象であることから、不眠が慢性化した患者様のQOL低下や社会的損失は計り知れず、適切な治療を施すことは極めて重要である。

 睡眠・覚醒は、脳内睡眠経路と覚醒経路のオン・オフによって調節されている。就寝中の覚醒経路の過剰活性化(過覚醒)が不眠症の主原因であることが示唆されている。これまで、不眠症薬物治療のターゲットとしては、睡眠経路の活性化に主眼が置かれてきたが、不眠症の主原因が過覚醒であることを踏まえると、覚醒経路を抑制するほうがより合理的な治療アプローチであると考えられる。

図

※画像クリックで拡大表示

 オレキシンは1998年に発見された神経ペプチドであり、覚醒と睡眠状態を制御するマスターレギュレーターとしての生理的役割が示唆されている。オレキシンペプチドはG蛋白質共役型受容体であるオレキシン1受容体とオレキシン2受容体を活性化し、覚醒を促進する。オレキシン産生ニューロンは外側視床下部に限局的に存在しており、そこから覚醒に関わる神経核に広く投射し、覚醒系のゲートキーパー的な役割を果たしている。著者らは、オレキシン神経系を抑制することは、過覚醒に直接介入する次世代不眠症治療の新たなアプローチになり得ると考え、オレキシン1/2受容体デュアルアンタゴニストの創出に取り組んできた。化合物探索を進める中で、3置換シクロプロパン骨格を独自のスキャフォールドとして見出し、不眠症治療薬として最適な前臨床プロファイルを有したレンボレキサントを創出した。二つのピボタル臨床第III相試験(SUNRISE1およびSUNRISE2試験)ではレンボレキサントの不眠症治療薬としての有効性・安全性が示され、日本、米国、アジアなどの15カ国以上で承認を取得している。

 引き続き、多くの不眠症患者様のアンメットメディカルニーズの充足に貢献することを心より願っている。



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