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【日本薬学会第144年会】奨励賞受賞研究 機能性微粒子設計による薬物動態制御を基盤とした薬剤科学的研究

2024年03月26日 (火)

静岡県立大学薬学部薬剤学分野 佐藤 秀行

佐藤秀行氏

 「クスリ」という言葉を逆さにすると「リスク(risk)」となるように、薬効と副作用は表裏一体であり、どのような薬も副作用がある。そのため、医薬品の有効かつ安全な使用には「必要な量を」「必要とされる場所に」「必要な時間で」届ける、いわゆるdrug delivery systemが極めて重要な役割を担う。私たちは効率的な薬物送達を達成するため、薬剤科学的技術ならびに異分野技術を発展的に応用して薬物動態制御を指向した機能性微粒子設計による新規投与形態開発を試みている。

 例えば、印刷工学分野の技術であるインクジェットヘッドを粒子設計用デバイスとして応用したFine droplet drying process(FDD工法)を開発した。本工法は、インクジェットヘッドの得意とする微細液滴の精密吐出を最大限活用したものであり、私たちはその幅広い応用可能性を明らかにしてきた。これまでに、固体分散体製剤や放出制御微粒子、吸入用微粒子等の設計に応用し、薬物の溶解性ならびに放出特性のコントロール等による薬物動態制御に成功している。

図

※画像クリックで拡大表示

 また、対象化合物の吸収制御を達成するため、吸収部位表面に存在する粘液層を利用した薬物送達にも注力している。薬物の主な吸収部位である消化管や肺、鼻、眼等はその表面に粘液層を有しており、これらは外来異物に対するバリア能を有するものの、薬物吸収では大きな障壁となる場合がある。

 これに対し、私たちはFlash Nanoprecipitation法により粘液透過あるいは粘液付着性の機能性ナノ粒子を開発し、様々な難吸収性化合物の経口吸収性制御を達成してきた。さらに、病変部位にて粘液分泌が亢進する疾患、例えば炎症性腸疾患や急性肺障害等に対し、このような製剤が効率的な薬物送達に有用であることを明らかにしつつある。

 薬物動態は医薬品開発において対象化合物のポテンシャルを左右する極めて重要な情報であり、その制御は薬効の最大化および副作用の最小化に貢献可能である。創薬モダリティが多様化する昨今、その重要性はさらに大きなものとなっており、今後も当該分野の発展に貢献するため研究に邁進していく所存である。



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