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【日本薬学会第144年会】奨励賞受賞研究 生体模倣型アルブミンを基軸とした革新的DDSの開発と難治性疾患治療への応用

2024年03月26日 (火)

熊本大学薬学部薬剤学研究室助教 前田 仁志

前田仁志氏

 ヒト血清アルブミン(HSA)は、生体内において薬物やホルモンなど多様な物質と結合し、組織へ輸送する機能を担っている。また生体適合性に富むため、古くからドラッグデリバリーシステム(DDS)への応用が試みられてきた。DDSとは、生体内での薬の動きを精密にコントロールする、つまり「必要な時間」に「必要な量」だけ「必要な場所」へ薬を届けるシステムである。

 これまでに私は、遺伝子組み換え技術によるHSAの改変をはじめ、アルブミン融合技術、化学修飾技術、ナノ粒子技術などを駆使し、生体環境に適合した高機能化HSAの創出による革新的なアルブミンDDSの確立を試みてきた。ここでは、その一例として糖鎖付加HSAによる臓器・細胞標的化について紹介する。

 HSAは糖鎖を持たない単純蛋白質である。これまでに60種を超えるHSA変異体が世界中で発見されているが、興味深いことに糖鎖を有するHSA変異体が3種類存在する。そこで、これら糖鎖付加HSA変異体の3カ所の変異を野生型HSAに導入することで、マンノースを高密度に発現する遺伝子組み換え型糖鎖付加アルブミン(Man-HSA)を創製した(図)。Man-HSAを生体に投与すると、肝臓のマクロファージ表面に存在するマンノース受容体によって認識され、肝臓内に素早く取り込まれる。

図

 そこでわれわれは、この動態特性を肝炎治療へ応用するために、1型インターフェロン(IFN)とMan-HSAの融合体(IFN-Man-HSA)を創製した。

 1型IFNがマクロファージに作用すると、抗炎症・免疫調節作用を発揮する。実際に、IFN-Man-HSAは急性または慢性肝炎に対してIFN単独よりも強力な肝保護効果を発揮したことから、今後は肝炎治療薬としての活用が期待される。

 HSAの魅力は、前述した以外にも、血漿浸透圧の維持能、抗酸化作用など、数多くの分子特性を有している点にある。臨床応用を見据え、今後もアルブミンDDSの新展開に貢献したい。



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