米国全土で梅毒の症例が急増している状況を受け、米食品医薬品局(FDA)は8月16日、NOWDiagnostics社に家庭用梅毒検査(First To Know Syphilis Test)の販売承認を与えたことを発表した。血液中の梅毒トレポネーマ抗体を検出する市販の家庭用検査としては初の承認である。ただしFDAは、「この検査結果だけでは梅毒の診断には不十分で、追加検査が必要」と述べている。
米国では、梅毒の蔓延を阻止するために、より迅速な診断が喫緊に必要とされている。米疾病対策センター(CDC)によると、梅毒の年間症例は2018年の11万5,000例から2022年の20万7,000例以上へと80%増加したという。
梅毒は、通常、性行為によって感染する。FDAは、「梅毒を未治療のまま放置すると、心臓や脳に深刻なダメージを与え、失明、難聴、麻痺を引き起こすことがある。また、妊婦が感染すると、流産、生涯にわたる健康問題、乳児死亡につながる恐れがある」と説明する。
今回承認された検査は、自分の指から少量の血液を採取して感染の有無を調べるもので、結果は15分以内に判明する。しかしFDAは、「検査結果はあくまで、医師やクリニックを受診して得られる、診断精度が確証されている検査ベースの診断への予備的なステップとして捉えるべきだ」と強調している。その理由の一つとして、梅毒の既往歴がある場合には、治療が成功していても陽性と判定される可能性があることを挙げている。
FDA医療機器・放射線保健センターのディレクター代理を務めるMichelle Tarver氏は、「性感染症に罹患した可能性を医療提供者に相談することに抵抗を覚える人もいるが、自宅での検査が可能になるなら、梅毒の一次スクリーニングを受ける人の数を増やすのに役立つ可能性がある。それにより、診断確定のための臨床検査数と治療を受ける人が増加し、それが感染拡大の減少につながる可能性がある」と述べている。
多くの診断テストと同様に、この検査でも、実際には感染していないのに「感染している」と判定される偽陽性、または、実際には感染しているのに「感染していない」と判定される偽陰性の結果が出る恐れがある。FDAは、「偽陰性の結果は、効果的な治療の遅れ、疾患の全身への広がり、コミュニティ内での感染拡大につながる一方で、偽陽性の結果は、不必要な追加検査や正しい診断の遅れにつながる可能性がある」と指摘する。
なお、今回の承認は、2023年に他の2つの主要な性感染症であるクラミジア感染症と淋病の同様の家庭用検査の承認に続くものである。Tarver氏は、「さまざまな検査、とりわけ性感染症の検査は進歩し続けている。そのおかげで、患者は自宅でプライバシーを保ちながら、自分の健康についてより多くの情報を得ることができる」と話している。(HealthDay News 2024年8月16日)