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米食品医薬品局(FDA)は9月11日、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)社の乾癬治療薬「トレムフィア」(一般名グセルクマブ〔遺伝子組換え〕)について、成人の中等度から重度の潰瘍性大腸炎への適応拡大を承認した。トレムフィアは、インターロイキン(IL)-23を阻害すると同時に、IL-23を生成する細胞上の受容体(CD64)にも結合することで二重作用を発揮する、唯一承認されている完全ヒト型モノクローナル抗体である。IL-23は、活性化した単球/マクロファージおよび樹状細胞から分泌されるサイトカインで、潰瘍性大腸炎をはじめとする免疫介在性疾患の原因となることが知られている。
今回の承認は、第2b/3相QUASAR試験の結果に基づいている。QUASAR試験は、従来の治療法や他の生物学的製剤、またはJAK阻害薬では効果が不十分もしくは不耐性を示した中等度から重度の活動期潰瘍性大腸炎の成人患者を対象に、トレムフィアの有効性および安全性を評価する多施設共同プラセボ対照ランダム化二重盲検並行群間比較試験である。
トレムフィア200mgの皮下投与による維持療法を4週間隔で受けた患者(200mg群)の50%およびトレムフィア100mgの皮下投与による維持療法を8週間隔で受けた患者(100mg群)の45%が、44週間目に主要評価項目である臨床的寛解を達成したのに対し、プラセボ投与群の達成率は19%にとどまった(p<0.001)。また1年後、内視鏡的寛解を達成した患者は、200mg群は34%、100mg群は35%であったのに対し、プラセボ群は15%であった(同)。
QUASAR試験の主任研究員である米シカゴ大学医学部のDavid T. Rubin氏は、「トレムフィアによる治療により、潰瘍性大腸炎の慢性症状が有意に改善し、重要なことに、腸内壁の内視鏡的所見が正常化した。トレムフィアの承認は、IL-23阻害薬の臨床的かつ確立された安全性プロファイルに基づくものであり、潰瘍性大腸炎の治療における大きな前進だ」と声明で述べた。
トレムフィアを潰瘍性大腸炎の治療に用いる場合、導入用量として1回200mgを初回、およびその4週間後と8週間後に医療従事者が静脈内投与する。維持用量としては、16週目以降8週間隔に100mgを皮下注射するか、12週目以降4週間隔に200mgを皮下注射することが推奨されている。
潰瘍性大腸炎は炎症性腸疾患(IBD)の一種であり、大腸の粘膜に炎症を引き起こす原因不明の慢性疾患。主な症状は、下痢、頻便、血便、腹痛、食欲不振、体重減少、疲労など。米国では100万人以上が潰瘍性大腸炎患者であり、世界的に見ても患者数は最も多く、その有病率は増加の一途をたどっている。(HealthDay News 2024年2024年9月16日)
https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/daf/index.cfm?event=overview.process&ApplNo=761061